「信者」を集めるのではなく、「観客」を育てていく

——どうしてもオンラインサロンのうさんくささってあるじゃないですか。閉じてるからこそなのかもしれないですけど、信者ビジネス的な部分のうさんくささ。そこに対する反発はあるわけですよね。

【東】そうそう。だからウチは「観客」という考え方をしています。信者とアンチってほとんど同じようなもんで、信者は内容と関係なく金を払うけど、アンチは内容と関係なく腐してくるんで。それはほとんど同じメンタルなんですよね。そうじゃなくて、1個1個のコンテンツに対してジャッジするくらいの距離感がある人をどれくらい抱えていくかが重要なんだと思ってますね。

——オンラインサロンで騙された人がアンチに回ったりするパターンもありますからね。

【東】その代わり必ず信者は供給されるから大丈夫、みたいな感じになってる。不健康だと思いますね。そもそもやってて主催者が楽しくないはずですよ。

壁にメモ
撮影=西田香織

——空手形を切り続けるのも絶対しんどいじゃないですか、「あなたたちは絶対に稼げるようになるから」みたいな。

【東】キツいですよ。だから、ゲンロンは、ウチに来たから成功するとか絶対に言わない。何もないって言ってます。ウチに来ても金は儲からないし人生も成功しない、そういうものじゃない? っていう。

——「そもそも金銭的には俺が成功してない」っていう(笑)。

大学を中心とした「知」が社会的に信用されなくなっている

【東】そうそう。だから空手形も何もないですよ。だから、最近の論調だと、インターネットはスケールの世界で、それに対してオンラインサロンっていうのがあって、そこは小さくてコアなファン向けに濃密な議論がされてるんだっていう話になってるけど、ぼくはこの両方とも違うと思ってるんですね。第三のモデルとしてゲンロンを考えてる。でも、考えてるだけじゃしょうがなくて、現実にビジネスの形にしたっていうことがポイントなんですけどね。

——たしかに信者ビジネスのほうがやりやすい気はするんですけど、ボクはなるべくそっちには行きたくなくて。本を買ってもらえる、イベントに課金してもらえるくらいの信頼関係でいいというか、それ以上の関係になりたくない。

【東】それ大事ですよね。ぼくは今年49歳なんですけど、ぼくがいつまで活動できるかわからないので、ぼくの後にゲンロンを残す方法を考えています。ぼくはいわゆるインテリと言われる層なんですけど、いまのインテリってすごくダメだと思ってるんですよ。

ひと言でいうとみんな大学のサラリーマンで、大学の職を失いたくない、しかし社会貢献している感じは出したいから、記者会見をやったりハッシュタグを打ったりする。そういう人たちばっかりになっていて。これでは知というものは社会的に信用されなくなると思うんですね。そこでなんか、別の形でまじめに知的なことが存在するモデルを作らなきゃいけなくて。先行世代は何もやってくれなかったんで、一応作ったモデルがゲンロンなんです。