「ハッシュタグで政治運動」というのは遊びにしか見えない

【東】いまはみんな条件反射じゃないですか。たとえば、最近は(noteを母体とするcakesが、DV被害に対する人生相談とホームレス記事と声優あさのますみさんの連載消滅という3度の炎上で)いろんな人がnoteやめるとか言ってるけど、noteやめるってどれだけやめたのか、草津温泉に行かないって言ってどれだけ行かないのか。彼らはハッシュタグを打ってるだけでどんどん忘れていくわけですよね。でも、ビジネスはそうはいかないわけで、給料を払うって言ったら給料を払わなきゃいけない。「#給料払う」と打てば給料払ったことになるんだったら、ぼくだっていくらでも打つけど。

——俺はもっと現実の世界で生きてるんだ、と(笑)。

【東】ハッシュタグを書いてるだけで政治運動やった気になるっていうのは遊びにしか見えない。そういう点では世の中に対する見方が変わっちゃいましたね。

——そういう現実の重要さについて書いた本でもあると思うんですけど、とにかくいちいちふつうのことを言ってるんですよね。オンラインよりもオフラインが重要だとか。

【東】超ふつうですね。デジタルトランスフォーメーションも、いまさらなんだかなとか思ってますよ。

撮影=西田香織

インターネットはSNSが出てきてて、おかしくなってしまった

——東さんもそうだし津田大介さんもそうだし、かつてネットメディアの代表みたいな感じだった人が、「やっぱり対面で話すことが重要だよね」っていう結論に至ったっていうところが興味深いんですよ。

【東】そうですね。ホントぼくもそう思いますよ。ふつうの結論に至ってますよね、やっぱり人って対面で腹を割らないとダメだよね、みたいな。

——津田さんがそれを言い出したときは爆笑しましたけどね。

【東】うーん。

——Twitterで世界は変わる、みたいなことを言ってた人が。

【東】SNSからおかしくなったんだと思いますね。インターネットは出発点はオルタナティブメディアだった。出版やテレビは100万、1000万の人間を相手にしてきたけど、インターネットだったら1万とか10万の数でも十分に人の生活を支えられる。最初はそういうメディアが出てきたんだと思ったし、実際に90年代に日記サイトとかやってた人たちは、小規模なスケールのオルタナティブメディアをインターネットに見て入ってきてたんだと思うんですよね。

それが2000年代になってSNSとかYouTubeとか出てきて、むしろインターネットがマスメディアよりも大きいマスメディアに変わっていくなかで、そういうオルタナティブなコミュニティを作る側面がどんどん忘れられていったと思うんですよ。

2010年代のインターネットは、かってぼくが昔夢見ていたインターネットではないんですよね。とにかくスケール感が重要で、いいねがいくつ、PVがいくつっていうことばっかりみんなが考えるようになってしまった。そういう意味ではぼくがゲンロンでやってることは、90年代に初めてインターネットに触れたときのネットの可能性を、自分なりの追い続けてる気持ちでもあるんですよね。