日本全国を食べ歩くさくま氏のお気に入り2選

また、さくま氏が日本全国を巡って非常においしいと感じたものを2つ教えてもらった。ひとつは、兵庫県は出石のトマト。『桃鉄』では「露店トマト屋」という物件で登場する。モデルとなった「まめいも屋」では、カメで冷やされたトマトが売られており、初めて食べたそれは絶品だったそうである。

青森県の五所川原市にある「揚げたいやき」も魅力だという。「あげたいの店みわや」という店の商品がモデルになっており、その名のとおりたいやきを揚げて砂糖をまぶしたもの。私が「話を聞いただけでおいしそうですね……」と言ったところ、さくま氏は満面の笑みを浮かべており、その表情からも揚げたいやきの魅力が感じられた。さくま氏のお気に入り度合いが『桃鉄』の作中で物件の収益率に反映されるという裏話も教えてもらった。

提供=KONAMI
『桃太郎電鉄 ~昭和 平成 令和も定番!~』(2020年)

さくま氏は“自然体のゲームクリエイター”

『桃鉄』最新作は新型コロナウイルスで帰省できないお正月にもってこいだ。家族で遊ぶのはもちろん、インターネットで離れた友達や親戚ともプレーできるからだ。ちなみに、KONAMIとしては異例のゲーム配信に対する許可が出ており、さくま氏もさまざまな実況動画や関連TV番組を見て楽しんでいるそうだ。

インタビューで話を伺っていると、さくま氏は何か明確に表現したいことがあってゲームクリエイターになったというよりは、いつも自然体で活動しているように見える。

「ジャンプ放送局」のライターであり、堀井雄二氏の友人であったためにゲーム制作の話が舞い込んできた。そしてゲームに登場させるキャラクターの原案のヒントも「ジャンプ放送局」にあり、メインターゲットである子供たちにウケる要素がわかっていたのでヒットにつながった。趣味が高じて『桃鉄』という新たな作品を作り、それらの仕事が縁となって多くの人とのつながりを生んでいる。多彩な経歴も、興味を持った仕事を片っ端からこなしていったからこそであろう。

『桃伝』こそ乗り気ではなかったが、ゲーム制作に対するこだわりはきちんとある。特により多くの人が楽しめるようにという意識が強く、『桃鉄』過去作では一般のプレーヤーにテストプレーしてもらうほか、大阪でゲームを作っていた縁で、毎日放送の番組に出ていたお笑い芸人たちにも遊んでもらっていたそうだ。

バッファロー吾郎A氏は、『桃鉄』をプレーするとどうしても持っているカードの存在を忘れてしまうのだという。さくま氏はその様子を見て、早く売り払わないと取り返しのつかないことが起こる「とりかえしカード」を追加。このように、遊ぶ人が本当に必要なものを自然に提供できているのだろう。

さくま氏は仕事は仕事だと割り切ってこなす側面もあれば、一方でこだわるべきところにはとことんこだわる。多彩な職歴からわかるように、マルチな能力があるために俯瞰して物事を見ることができ、取捨選択ができるのではないか。それこそが“さくまあきらの強み”であり、ゲーム制作でも活かせる能力なのだろう。ゆえにさくま氏は、『桃鉄』最新作のタイトル通り、昭和・平成・令和に至る現在まで活躍を続けられているのではないだろうか。

(聞き手・文=渡邉卓也(ゲームライター))
関連記事
なぜワークマンは「それは私の仕事ではありません」と言う社員を大歓迎するのか
「1位は0.7年」平均勤続年数ワースト300社ランキング2020
「1位は三菱製紙の25年超」平均勤続年数トップ300社ランキング2020
「ここまでして今、実家に帰るか」医師が考える"それでも帰省する人"がクリアすべき21条件
なぜNiziUは世界を興奮させるのか…日本のエンタメが「韓国に完敗」した理由