昨年11月に発売されたゲームソフト『桃太郎電鉄 昭和 平成 令和も定番!』が、累計出荷本数150万本超え(12月28日現在)の大ヒットを記録している。総監督を務めるさくまあきら氏は、1987年に『桃太郎伝説』でデビューした伝説のゲーム作家だ。なぜヒットを生み続けることができるのか。ゲームライターの渡邉卓也氏が聞いた――。
『桃太郎電鉄 ~昭和 平成 令和も定番!~』(2020年)
提供=KONAMI
『桃太郎電鉄 ~昭和 平成 令和も定番!~』(2020年)

デビュー作『桃太郎伝説』は“やらざるを得なかった”

『桃太郎伝説』や『桃太郎電鉄』シリーズの生みの親、さくまあきら氏はあまりにも多彩な経歴の持ち主である。フリーライター、ラジオパーソナリティー、放送作家、歌手、作詞家、マンガ評論家の仕事を経験し、自ら立ち上げた出版社のマンガ雑誌の事業で億単位の赤字を出したという“人生の谷”も経験した。いまでこそさくまあきら氏はゲームクリエイターとして著名だが、そもそも「自分がゲーム作家になるとは思っていなかった」のだという。

さくま氏は、1987年の『桃太郎伝説』(『桃伝』)でゲームクリエイターとしてデビューし、その後も『桃太郎電鉄』(『桃鉄』)シリーズなどのヒット作品を世に送り出している。

そして、2020年11月に発売されたNintendo Switch用ソフト『桃太郎電鉄 〜昭和 平成 令和も定番!〜』は初週50万本を突破という異例のヒット。12月28日現在で累計出荷本数150万本を記録しており、多くの人々から支持を得ている。ファミリーコンピュータの時代から活躍を続けるゲームクリエイター、さくまあきら氏に、その哲学を聞いた。

さくま氏は病気の後遺症でほとんど発話ができない。そのような中、さくま氏の妻である佐久間真理子氏にアシストをしていただきながら話を聞いた。

さくまあきら氏
撮影=渡邉卓也
さくまあきら氏

現在のさくま氏は『桃鉄』シリーズの生みの親としての印象が強いが、初めて手掛けた作品は1987年に発売されたファミリーコンピュータのRPG『桃太郎伝説』だ。いまでこそRPGは日本国内でも多くの人に楽しまれているが、当時はまだはやり始めだった。『ドラゴンクエスト』や『ファイナルファンタジー』など洋風の世界観のRPGが多かったなか、和風RPGというジャンルの先鞭せんべんをつけて100万本を越えるヒットを記録。サザンオールスターズの関口和之氏が楽曲を担当しているのも売りだった。

さくま氏は『ドラゴンクエスト』シリーズの生みの親である堀井雄二氏と友人であり、その縁で広告代理店からゲーム制作の依頼がきたが、はじめはそこまで乗り気ではなかったという。