夫が適応障害から鬱に

清水さんの義父は、40代でベーチェット病を発症。ベーチェット病とは、口腔粘膜のアフタ性潰瘍、外陰部潰瘍、皮膚症状、眼症状の4つの症状を主症状とする慢性再発性の全身性炎症性疾患で、難病に指定されている。発症以降、闘病を続けてきたが、70代に入ってから急激に悪化。

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清水さんは障害を持つ息子を抱えながら、義父の病院への送迎や病院手続きなどをする義母をサポートした。夫には姉がいるが、関西に住んでいるため、あてにできない。

息子が中学生に上がる頃(2010年頃)、義父は肺がんを併発し、帰らぬ人となった(享年78歳)。

その頃から清水さん(当時36歳)は入浴中、発作的に強い不安に襲われることが増える。

「ふと、息子と自分の将来について考えると、強い不安に襲われて、まるで今現在、自分が死んだような気持ちになり、息子を1人にしてしまう恐怖感で耐えられなくなりました」

しばらくして夫(当時43歳)が転勤になり、上司からパワハラを受け始めた。夫はストレスから精神のバランスを崩し、心療内科に通い始める。幸い夫の味方は多く、深刻な状況にはならなかったが、主治医に夫が清水さんのことを話したところ、「奥さんのほうが心配だから連れて来てください」と言われた。

清水さんは気が進まなかったが、障害の程度を判定する障害者区分認定を受けるために、息子を心療内科に連れて行く必要があったため、ついでに自分も受診。清水さん自身は自覚がなかったが、医師は清水さんの不眠を見抜き、睡眠導入剤と抗不安薬を処方した。

ところが、息子の養護学校卒業が迫ると、清水さんは再び強い不安に襲われ始めた。

「養護学校は、子どもも親も同じ境遇の人ばかりで居心地が良く、ふと、『もうすぐ卒業か、せっかくできたお母さん友だちとの交流も減るだろうな』と思ったら、急に恐怖心が湧いてきたのです」

そこで清水さんは、「働きに行こう! 新しいコミュニティができるし、お給料ももらえて、お客さんの役に立つこともできる!」と思い立つ。清水さんは週3~4日、大好きな100円ショップでパートとして働き始めた。

「息子や夫の世話をしても感謝されませんが、お客さんからは喜んでもらえます。仕事に行くと気持ちがシャキっとするので、私にとってはすごくいい気分転換になりました」

しかし2017年。再び夫(当時51歳)が転勤になり、新しい上司からパワハラを受け始める。前支店では味方が多かったが、今回はほぼ全員が上司側につき、夫は苦しんだ。それでも夫は半年ほど頑張っていたが、適応障害と鬱病の診断書が出されると、夫は問題の上司に診断書を提出し、1年間の休職に入った。

そして2018年末。会社から今後の選択肢を提示され、夫は退職を選んだ。