ビジネスの本質は「これ、値段の割に安いよね」と思わせること

数字の話の延長として、「値段」についても触れます。値段、価格ほど重要な前提条件はないからです。

実業家として知られる稲盛和夫氏も、経営哲学のひとつに「値決めは経営」という言葉を掲げています。僕もさまざまなビジネスに関わってきたなかで、値段については散々考えてきました。

そうした経験を通じて、「ビジネスの本質は、『価格と価値の不等号』を成立させることにある」と考えるようになりました。

お客様に、「これ、値段の割に安いよね」と思ってもらえたら、「価値>価格」が成立したということです。だから買っていただける。至ってシンプルな話です。

逆に、価格に見合った価値を感じてもらえなければ、こちらがどんなに素晴らしい商品だと思っていても、絶対に買ってもらえません。

同じ1万円の商品でも、「これで1万円もするのか……」と買ってもらえないケースもあれば、「これが1万円なんて安い!」と即買いしてもらえるケースもある。だから、値決めは難しいのです。

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価格ではなく、「価値」をいじれ

この不等号を成立させるために、つまり、買ってもらうために、多くの人がやりがちなのが、「価格をいじる」ことです。

たしかに、値段を下げて「半額セール!」と売り出せば、それなりに売れるかもしれませんが、競合も半額セールをすれば勝てなくなります。低価格競争は結局、体力勝負・持久力勝負なので、削れる粗利に限界のある小さな会社が大企業に勝つのは難しい。それに、そもそも値札を付け替えるだけというのは、価値を無視した行為です。

そこで僕は、「価格ではなく価値をいじる」ということを一貫して考えてきました。実際、僕が代表を務めているインスタイルグループはM&Aで買収した一部の会社を除けば、セールを一切行いません。これは「価格よりも価値をいじったほうが最終的に勝ちやすい」と考えているからです。

具体的には、商品やサービスのクオリティを上げることで、価格と価値の不等号を成立させています。これがいわゆる「付加価値」です。