能力が劣った者が能力の高い者に勝つにはどうしたらいいのか。古今東西の寓話を読み解いたキャリアカウンセラーの戸田智弘さんは「日本版でカメが勝った要因は諦めずに努力した点もあるが、たまたま幸運が舞い込んだとも言える。一方、アフリカ版は知恵を働かせて周到な準備を整え、仲間に協力してもらっている」という――。

※本稿は、戸田智弘『人生の道しるべになる 座右の寓話』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)の一部を再編集したものです。

ウサギとカメのレース
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ウサギとカメ①

ウサギとカメが足の速さのことで言い争い、勝負の日時と場所を決めて別れた。さて、勝負の日、かけっこが始まった。

ウサギは生まれつき足が速いので、真剣に走らず、道からそれて眠りこんだ。

カメは自分が足の遅いことを知っているので、たゆまず走り続けた。カメは、ウサギが横になっているところを通り過ぎて、勝利のゴールに到達した。

油断大敵、才能より努力

この寓話ぐうわからは二つの教訓を引き出すことができる。ウサギに焦点をあてれば「油断大敵」という教訓、つまり強者であってもそれに甘んじて油断していると、弱者と侮っていた相手に負けてしまうことだってあるという教訓が得られる。カメに焦点をあてれば、弱者であってもコツコツとまじめに頑張っていれば、ときに幸運が転がりこんで強者に勝てることもあるという教訓が得られる。

ところで、競走は本来、公正でなければいけないのに、この勝負は公正さに欠けているように思う。カメは、陸ではなくて水(池など)での勝負を提案してもよかった。当然、泳ぎが得意ではないウサギはそれを拒否するだろう。陸上で勝負するか、水上で勝負するかで意見が分かれるかもしれない。トライアスロンのように、スイム(水泳)とラン(長距離走)を組み合わせた勝負が公平な競走だと思う。