一杯1万円と一杯300円、成功しやすいラーメン屋はどちらだろうか。経営コンサルタントの西村豪庸氏は「僕なら一杯1万円のラーメン屋をつくる。価格を決めてから、『値段の割に安い』といわれるための付加価値を考えていく」という――。

※本稿は、西村豪庸著『SURVIVE 不確実性の高い新時代における生き残り戦略』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。

福岡市の屋台
写真=iStock.com/gionnixxx
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流行っている店は数字に落とし込んで考え抜かれている

数字で判断することは、客観視をしていく上でもとても重要です。僕がこうした意識を培ったのは、一つには飲食店経営時代です。

19歳のときに起業してバーを開いてから、僕は和洋中、多国籍、カフェ、レストラン、バーなど、最終的には当時「寿司と焼肉屋以外はだいたいあります」と言っていたくらい、すべてのスタイルの飲食店を経営しました。さらに、自分で飲食業を経営する傍ら、飲食関連の派遣会社に登録して、さまざまなレストランで働かせてもらった時期もあります。

こうした経験の中で、流行っている店は数字に落とし込んで考え抜かれていることを身にしみて知りました。

その後、コンサルタントとしても、経営者としてもさまざまな業種に携わってきましたが、やはり、「数字を基準に考えられているか、いないか」が、ビジネスの成否に大きく関わっていました。

バーを開業するなら「バーテンダーの処理能力」を数値化する

さて、突然ですが、ここで問題です。あなたがバーを開くとして、店内に置くカウンターの席数を決める場面を想像してみてください。

店舗の広さや、お客様の数など、考えるべき要素はいくつかありますが、僕なら最初に「バーテンダーの処理能力を数値化」します。

まず、カウンターに立つバーテンダーが、どれくらいの客数をさばけるのかを見積もります。たとえば、「ウチのバーテンダーのAさんは、1人で10人まで接客できる」といった場合は、この数字をもとに、カウンターの席数を考えます。

ここでもし、12席のカウンターを作ってしまうと、バーテンダー1人だけでは満席時にさばききれなくなります。お客様を10人しか入れないようにするか、バーテンダーを増やすしかありません。

でも、12席あるのに10人しかお客様を入れないと、「あそこ空いているじゃないですか」とお客様からクレームが来そうです。

では、バーテンダーを増やせばいいかというと、今度は「増やしたバーテンダーのリソースが余ってしまう」という別の問題が起きます。

仮に1人で10人さばけるバーテンダーを2人雇ったとすると、20人さばけるリソースがあるのにカウンターは12席。どうしてもバーテンダーの手が8人分空いてしまいます。給料は2人分支払っているのに、常に手が余っているという状態になるのです。

自然界に「0.2人分のバーテンダー」が存在すれば帳尻は合いますが、そんな人間はいませんから、どうしたって無駄が生まれるわけです。

こういった問題が起きないように、あらかじめしっかり数値化して、「バーテンダーの能力に見合った席数のカウンターを設置する」ことが肝心です。10人をさばけるバーテンダーがいて、10席のカウンターがあれば、オペレーション上の無駄も不足も起きません。あとは満席を目指して努力すればいいだけです。