「膨大な数の人間が、本当は必要ないと内心考えている業務の遂行に、その就業時間の全てを費やしている。(中略)こうした状況によってもたらされる道徳的・精神的な被害は深刻なものだ。それは、私たちの集団的な魂を毀損している傷なのである。(12ページ)」
問題視するのは「ブルシット・ジョブの多さ」だけではない
著者が問題視するのは「ブルシット・ジョブの多さ」だけではない。より本質的な問題は、ブルシット・ジョブの多くが世間では専門職として敬われ、往々にして高収入であるのに対し、社会に絶対に必要なエッセンシャルワークの多くがその真逆であるということだ。本書では投資銀行、広告代理店、税理士などの具体例を挙げ、「もらっている報酬の数十倍の社会的価値を破壊している」と指摘する。
このような状況は、どうすれば改善できるのだろうか? 著者は「自分の仕事は誰も気づいていない問題を指摘することで、問題解決のための処方箋を提案することではない」と慎重に断ったうえで、「普遍的ベーシック・インカムの導入しかない」とまとめている。つまり「労働と報酬を切り離す」ことで、労働本来がもたらす楽しみややりがいに応じ、人が職業を選ぶ社会に転換させることを提案しているのだ。問題指摘も刺激的なら解決策の内容もシビれる。一読を強く勧めたい。