女性の自己肯定感が低い悲しい理由
自己肯定感に性差が生じる理由について、さまざまな視点からの理論的な考察がなされていますが、①自己肯定感は、男性が社会的にもとめられる役割と一致しやすいこと、②女性の性役割として、自己肯定感と負の関連を示す謙虚さの規範が存在すること、③女性は自分の外見に対する関心が高いため、外見についての自己肯定感が、より低くなりやすいこと、の3点が挙げられています。
①②に関しては、例えば、男性が仕事をがむしゃらに頑張って成し遂げる姿は、ある一定の評価を得ることが多いにもかかわらず、女性が謙虚さを示さずに(かといって横柄になるということではなく)、男性と対等に渡り合って頑張っていると、「あいつは気が強い」等とその過程でマイナスなニュアンスの評価を受けることが挙げられます。
男性は、強く頑張っていることが評価対象になる一方、女性の場合には、男性と対等に渡り合って頑張る態度が、必ずしも手放しで賞賛されるとは限らないためです。自己肯定感の高低は、大小問わず自身が望んだこと、やってきたことがどのくらい達成できたかによっても決まってきます。そのため、このようなジェンダーバイアスや謙虚の規範が、女性の行動を無意識的に制限し、結果として女性の自己肯定感を低くすることにむすびついている可能性が考えられます。
自己肯定感を安定させる評価軸
自己肯定感が低い人は、自分を認めてあげましょう、というフレーズをよく目にしますが、では、自分を評価するとき、次のどちらで評価するのがよいのでしょうか? 「すごくよかった(very good)」あるいは、「これでいいよ(good enough)」。
今なお研究上最も多く利用される、Self Esteemの尺度を作成したRosenbergは、これらの使い方を区別する必要があることを指摘しています。自分を「とてもよい(very good)」と考えることは、優越性や完全性の感情と関連し、自分が他者より優れていると感じることであるのに対し、自分を「これでよい(good enough)」と考えることは、自分に好意をいだき、尊重することであるため、優越性や完全性は含まれていない、と説明しています。
つまり、他者との比較によって生じる、自分を「とてもよい(very good)」と考える場合の自己肯定感は、自分よりさらに優れた他者の出現により脅かされるものであり、安定性に欠けるのです。一方、他者と比較せず、自分の内部の価値基準に達していれば良しとする、自分を「これでよい(good enough)」と考える場合の自己肯定感は、安定したものになるのです。