テレワークは自然な労働形態になる

自宅待機時に幅広く導入されたテレワークは、重要性を増してより自然な労働形態になるだろう。

危機後も企業は従業員に対して、少なくとも一部の業務についてはテレワークの続行を奨励するだろう。アメリカでは、60%の職業は自宅で遂行可能だと見積もられている。デジタルインフラが整備されている国では、ほとんどのサービスが遠隔化可能であり、ほとんどの会合、会議、シンポジウムなどは、ヴァーチャルで開催できるだろう。

2035年ごろには、10億人がノマド化し、自宅など、事務所以外の場所で働くようになるかもしれない。

このような傾向により、求人のあり方も変化するはずだ。アメリカでは、求人情報サイト「ZipRecruiter」が提供する仕事のうち在宅勤務が可能な仕事の割合は、2020年3月以前は1.3%に過ぎなかったが、2020年5月には11%以上になった。

在宅勤務の割合が増えれば、事務所に必要な面積は大幅に縮小する。企業は地価の高い都市部のオフィス街に密集して活動する必要がなくなるので、事務所面積の縮小傾向は加速するはずだ。

偶然の発見を促す交流の場が必要だ

しかしながら、いくつか留保すべきことがある。顔の見えないヴァーチャルな社員が単に集まっただけでは企業は成り立たない。在宅勤務へと拙速に移行すれば、あまりにも多くのものが失われるだろう。商取引にとって不可欠な渉外の仕事は、仕入れ先や顧客との打ち合わせ、会合、昼食、ディナー、同僚との飲み会をともなう。また、ほとんどの創造性は、偶然の出会いや不意の会話から生じる。これらのことは偶発性に乏しいヴァーチャルな会合からは生まれない。

写真=iStock.com/filadendron
※写真はイメージです

また、学会、会議、シンポジウム、サロン、フォーラムの利点の大きな部分を占める「出会い」〔新規の取引や人材発見のきっかけ〕が失われる。聴衆に自らを知ってもらい、ヴァーチャルに出会うことができるのは発表者だけだ。

企業における最も重要な場は、しばしばコーヒーマシンの前やカフェテリアだ。こうした事情を心得ている通信社、ブルームバーグのニューヨーク本社では、事務所の環境がカフェテリアさながらだ。こうした職場がなくなると、仕事上の人間関係は冷え切った人間味のないものになり、社員は忠誠心を失い、これまで以上に金銭にしか関心を示さなくなるだろう。つまり、遠隔会議は社会的つながりを徐々に分断していく要因の一つとして、集団構造を緩やかに解体していくのだ。

これを部分的に補うには、ヴァーチャル会議においても各自が自由闊達に発言できるようにし、交流の質を保たなければならない。つまり、偶然の発見を促す彷徨を推進するための方法を見つけ出す必要があるのだ。ヴァーチャルなカフェ空間をつくるのも一つのアイデアだ。一部の出会い系サイトなどですでに運用されているこうした仕組みを、企業やヴァーチャル化した会議に取り入れるのだ。こうした方法は、専用アプリとともにすでに黎明期にある。