「ポジティブな企業」に優秀な人材が集う
企業が優秀な人材を保持するには、社員の仕事に意義を付与することが何よりも重要だ。そのためには、企業の成績を評価するうえで、株主の利益以外にも基準を定めなければならない。企業は、自社の従業員、顧客、労働環境の保護、そして、将来起こり得る危機への備えに関して責任を負うべきだろう。企業にはこれらのことに対し、少なくとも株主の利益に対するのと同等の配慮が求められる。より一般的に言えば、企業は将来世代の利益に資する、昨今言うところの「ポジティブな企業」になる必要があるのだ。
こうした概念を理解しつつも利益を追求することしか頭にない経営者の空虚な演説に、われわれは騙されてはいけない。彼らはかつての「グリーンウォッシング」〔環境に配慮する振り〕から「ライフウォッシング」〔生命に配慮する振り〕という態度に鞍替えしただけだ。株主たちまでもがこうした経営者の嘘に納得しなくなったとき、変化は訪れる。将来的な危機への準備を怠る企業に投資するのは危険だからだ。
2025年には10億人がテレワークで働く
国が生き残るには、居心地のよいホテルのような振る舞いをしなければならない。国民はその従業員である。国は世界に自国の文化、アイデンティティ、特異性を知ってもらうために尽力し、自国に投資する人、自国で消費する人、あるいは専門的な能力を自国にもたらす人を全力で歓待する。
企業もまもなくホテルのような存在でなければならなくなるだろう。その理由を記す。
企業の組織形態は、パンデミックによるテレワークの推進によって一変した。企業の組織形態が過去の状態に戻ることはないだろう。
一つめの理由は、パンデミックが終息とは程遠い状態にあるからだ。完全な都市封鎖の決断が新たに下されることはないとしても、多くの従業員はデスクがびっしりと並ぶ職場に戻って働くリスクをとりたがらないはずだ。
二つめの理由は、パンデミックにより、複合型経済(サービス部門がGDPの70%にまで達することもある)では大半の業務はテレワークでこなせることが明らかになったからだ。2025年には少なくとも10億人がテレワークで働くという見通しさえある。