トランプが目指すのは「永遠に尊敬される大統領」
トランプが選挙運動で熱狂的に歓迎されるのは、共和党の保守派、つまりキリスト教的価値観を大事にする地域である。トランプは「3期目もありえる」と言い出している。アメリカでは大統領職は2期までと決まっていることなどお構いなしだ。
トランプはサウスダコタ州のラシュモア山に刻まれた元大統領4人の顔、ジョージ・ワシントン、トーマス・ジェファーソン、エイブラハム・リンカーン、セオドア・ルーズベルトに自分も加えてほしいと要請したことも伝えられている。
建国の父は特別だが、それ以外にも、共和党ではリンカーン、民主党ではルーズベルトが最も尊敬されているというのがアメリカでの共通認識である。トランプは、リンカーンが使った聖書で大統領就任式の宣誓をするなど、同じ党の大先輩として意識していることは明らかだ。
リンカーンは南北戦争を戦い、自分は思想的内戦を戦っていると定義しているのではないだろうか。トランプが民主党を「左に寄りすぎた社会主義者だ」と恐怖を煽っているのは、そのためだ。
ただし、最近ではトランプがリンカーンに言及する機会は減っている。今や、トランプの口から出てくるのはイエス・キリストだ。つまり、神なのである。トランプが今目指しているのは、今だけでなく永遠に尊敬される大統領になることだ。
キリストに導かれるトランプ
トランプは「トランプ大統領を永遠に」という動画を自分で流している。この動画については、私が知る限り、2つのバージョンがある。1つは「2020年」のロゴとトランプの顔、2024年のロゴとトランプの顔、2028年にもトランプの顔……と選挙のある年が永遠に映し出され、最後に「永遠に」という言葉とトランプの顔写真で終わるバージョンだ。
もう1つは、2020年は自分の顔、2024年と2028年は娘イバンカの顔、その次の8年は長男トランプ・ジュニア、さらにまた次の8年は次男のエリック、最後の8年は現在の妻メラニアとの間にできたトランプ家の三男バロンの顔が映し出されるバージョンである。つまり、2052年までトランプ家が大統領であり続ける、というメッセージだ。
到底、日本人の感覚では理解できない。しかし、そんな動画を配信しても、トランプ支持者は離れない。共和党は全米にくまなく、それも一箇所に複数の世論調査ができる体制を築いて精度を上げている。どこの州でどれだけの票が獲得できるかの詳細な数字を持っている。その精度は「民主党以上」と共和党の選挙関係者は胸を張る。それだけトランプ人気は底固いという調査結果が出ているのだろう。
トランプ支持者のSNSには、トランプがイエス・キリストに導かれながら、政権を運営するイラストが出回っている。執務室で法案に署名するトランプをキリストが後ろから抱き、手をトランプの手の上に重ねている。ヒッチハイクしながらアメリカに戻るキリストのイラストもある。熱狂的な支持者は、「トランプはオバマが追い出したキリストを戻れるようにするために遣わされた」というストーリーをも作り上げているのだ。