私はそれをチャットアプリ「スラック」で知りました。政府の情報公開やデジタル化を推進するスラック上のチャンネルには8000人以上のシビックハッカー(政府が公開したデータを活用してアプリやサービスを開発する市民プログラマー)が参加しています。私がマスク在庫マップを作ることを提案し、行政がマスクの流通・在庫データを一般公開すると、シビックハッカーたちが協力して、どこの店舗にどれだけのマスクの在庫があるかがリアルタイムでわかる地図アプリを開発したのです。これによって、誰もが効率的にマスクを購入できるようになりました。
78歳のIT大臣でも年齢が問題なのではない
――タンさんは16年に35歳の若さでデジタル担当大臣に就任しました。一方、日本では78歳のIT大臣が話題になりましたが、その適性を疑問視する声もあります。
78歳というと私の父と同世代ですね。しかし、年配のIT大臣は決して悪いものではないと思います。今の行政院長(日本の首相に当たる)の蘇貞昌も73歳と決して若くはありません。しかし、彼に何かを説明したときに「もう1度言ってくれ」と聞き返されたことはありません。頭は非常にクリアです。そういう人が身近にいますから、私は年齢で適正を判断すべきとは思っていないのです。
台湾では「青銀共創」という試みが盛んです。若者(青)と高齢者(銀)がお互いに学び合って、共同でイノベーションを起こそうというわけです。高齢者は若者からデジタル社会とどう接したらいいかを学び、若者は高齢者から知恵や経験を学びます。互いにわからないことがあるからこそ、そこにイノベーションが起こるのです。
若者とシルバー世代には、それぞれ異なった角度からの見方があります。それを結合させた例が、経済復興対策として発行された三倍振興券です。この振興券は、紙のチケットで欲しい人は紙でもらい、クレジットカードを使い慣れているならカードに情報を載せて使えるようにしました。二者の選択の割合は半々くらいです。この振興券を作るときに若者と高齢者が共同でアイデアを出す場がなかったら、どちらか一方のやり方だけになって、残り半分は置き去りにされていたかもしれません。これは看過できないことです。
重要なのは、どうすれば全世代が一緒に政策をつくっていけるかを考えることなのです。
間接民主主義の限界はデジタルで打破できる
――「青銀共創」は理想的なあり方のように思えますが、日本で実現するのは難しいように思われます。なぜ台湾ではそれが可能なのでしょうか。