末端の旅館よりも、旅行会社を助けたいのか
旅行会社を通したほうが有利、という制度設計は、国土交通省・観光庁が、末端の旅館やホテルなどの宿泊事業者よりも、旅行会社を助けることに主眼を置いたためではないか、と疑われている。
国交省・観光庁は地域の宿泊業者よりも、旅行会社のほうが付き合いが濃い。大手の旅行会社に便宜をはかれば、いずれ天下りなどのメリットがあると考えたかどうかまでは分からない。だが、Go To トラベル事務局が大手旅行会社の出向で運営され、1日4万円という多額の人件費が払われていることなどが報じられている。
日頃付き合いの深い旅行会社が危機的な状況になっていたことが、制度設計に影響したことは十分に考えられる。というのも、新型コロナウイルスの蔓延で人の動きが止まったため、主要旅行業者の「旅行取扱額」が激減しているのだ。
「等しく救いの手を差し出す」のは本当に平等か
国内旅行だけを見ても、前年同月比で4月は93.6%減、5月は96.6%減、6月は87.9%減と、まさに「壊滅」状態だった。「Go To トラベル」が前倒しで開始されたのも、こうした惨状を訴える声が霞が関や永田町に寄せられたからに他ならない。「Go To トラベル」が中旬から始まった7月の国内旅行取扱額はいくぶん持ち直したとはいえ、78.4%減だった。8月以降の統計はまだ出ていないが、Go To トラベルが旅行業者に大きな救いになったことは間違いない。
だが、細かく配分先を決めたのはなぜか。「どの業者にも平等に」と役所が考えたのだとしたら、はからずも役人の限界を示しているように思う。
「新型コロナの蔓延で打撃を受けているのはどこも同じなのだから、等しく救いの手を差し出すべきだ」というと、「いかにもごもっとも」という感じもする。だが、それをやると、新型コロナ前から限界に来ていた業者も一律に救うことになるのだ。いわゆるゾンビ企業を救済することになるわけだ。それが本当に「平等」なのかどうか。