時代の変化、業界の変化を読み切れていなかった

新型コロナの影も形もなかった2019年夏、老舗旅館グループの社長が、大手旅行会社の名前を複数挙げて、もう取引を止めたと話していた。旅行業者にまとまった部屋数を任せて売ってもらう昔ながらのスタイルがまったく機能しなくなったというのだ。その代わり大切にするのが「大手の予約サイトだ」と話していた。

宿泊業の現場から見ても、それぐらい旅行会社は追い詰められていたわけだ。そんな旧来型の旅行会社を守るような形にキャンペーンをしてしまえば、将来に大きな禍根を残すことになりかねないのだ。

日本の温泉のイメージ
写真=iStock.com/kuppa_rock
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そんな状況だから、旅行商品の窓口販売にいまだに依存する旧来型の旅行会社よりも、予約サイトのほうがまたたく間に分配された予算を使い切るのはある意味当然の流れだった。しかも新型コロナで出歩くことが減り、自宅でパソコンに向かう時間が増える中で、ネット予約が大きく伸びたのは当たり前といっても良い現象だった。そうした時代の変化、業界の変化を、役所は読み切れていなかったということだろう。

地域ごと、業者ごとに助成金を割り振るのは一見平等だが、それでは不採算事業者が淘汰されない。価格競争に走る事業者が出てくるため、業界全体の価格引き上げができなくなる。日本の産業界の中でも生産性が低い業種とされる、宿泊業が低付加価値に喘ぎ、従業員の給与が引き上げられないでいる最大の要因は、価格が安過ぎるからだ。

公平性にこだわると「かつての国鉄」になってしまう

本来、国が民間企業に直接、金銭的支援を行うことは「禁じ手」だ。国が資金を入れれば民間同士の競争を阻害することになりかねない。だから、「平等」になるよう、役所は綿密な予算配分を決めたのだろう。だが、そんな「計画経済」のような役所の論理通りに民間企業が動くわけではい。

また、「公平性」にこだわって、旅行業者に一律に助成金を出すようなことをすれば、旅行業界も「官業」になってしまう。かつての国鉄や電電公社の例を出すまでもなく、「官業」になれば競争が嫌われサービスもまったく改善されなくなってしまう。

民間の事業者同士や、地域同士が切磋琢磨することが、業界全体を成長させる。そのためには、国民の選択を優先し、国民が選んだ事業者が最終的に生き残っていける助成制度にしていくべきだろう。

赤羽国交相は会見で「客に支持されているのに、国がコントロールするのはなかなか難しい」と述べ、業者間の配分枠を撤廃する方向性を示した。今回のドタバタ劇をきっかけに、創意工夫によって利用者を引き付けている事業者や地域がより恩恵を受けられる制度に、今からでも遅くないので脱皮させていく必要があるだろう。

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