しっとりとした銅が金ピカに……“改造”を許せば日韓関係悪化は必至

そして今月になって、不穏な動きがあった。

地元長崎新聞の報道(10月8日)によれば、韓国・浮石寺側が高裁の場で、仏像に金彩を施す意向を示したという。同紙が外務省などへ取材し事態が判明した。現在の観音菩薩像は経年変化によって、文化財らしい、しっとりとした銅の味わいを見せている。それを、真新しい金ピカの像に勝手に改造するというのだ。

同紙が九州国立博物館に取材したところ、金など不変的なものへの信仰があつい中国や朝鮮半島では、仏像に金箔きんぱく金泥きんでいを施す仏教儀式が見られる。しかし日本国内の文化財の無許可の現状変更は、文化財保護法や県条例に違反する恐れがある。

外務省や観音寺住職は、韓国側に早期の返還を求め続けており、すでに日韓の外交問題に発展しているが、韓国側が盗難品の改造を許せば、ますます日韓の関係は悪化しそうだ。

日本の寺院にある古美術を海外窃盗団が狙う背景

海外の窃盗団が日本の寺院を狙う背景には、日本の古美術にたいするブームがある。欧米や中国などの富裕層が、こぞって日本の古美術を買い求めているのだ。

日本で盗まれた仏像類は香港などのオークションを経由し、世界各地へと散逸していく。近年、オークション会社は売却先を明かさないので、落札された仏像類が日本に戻ることは二度とない。

撮影=鵜飼秀徳
九州にある無住寺院

コロナ禍で外国人の入国が制限される中、海外窃盗団の犯罪は一時的に減っているとみられるが今後、入国制限の緩和が広がっていけば、再び海外窃盗団による事件が多発する可能性がある。来年、東京五輪が開催されれば、いっそう、国内の美術品が海外に流れてしまうことも考えられる。