他ブランドに比べて自由度がきく強み
アイスの「実」なので、果実を深めるのは分かるが、現在は期間限定で「白いカフェオレ」、過去には大手コンビニ限定で「濃厚キャラメルマキアート」味も出した。9月1日からは野菜味も一部コンビニでの数量限定で登場した。
果実以外の味を広げるのは、社内の他ブランドの持ち味を侵すことにならないのか。
現在、江崎グリコの冷菓部門には5つの人気ブランド=「パピコ」「ジャイアントコーン」「アイスの実」「牧場しぼり」「パナップ」があるからだ。
「そこは一定の住み分けをしながら広げており、目的として『こんなに味が進化しているのを消費者に伝えたい』ねらいもあります。アイスの実は、ユーザーの方の特徴として『新しい情報を収集したり新商品を試したりすることが好き』という方が多い傾向もあることから、ジェラートの枠組みの中で、違う味の訴求もしやすいのです」
前述した野菜味とは、高級料亭「京都吉兆」とのコラボレーションで、「アイスの実〈国産野菜シリーズ〉」として「国産とうもろこし」「国産かぼちゃ」「国産紫いも」の3種類がある。京都吉兆の徳岡邦夫総料理長が監修した。老舗料亭の名をつける以上、理想の味に高めるために試行錯誤を繰り返した上で、市場に送り出したという。売れゆきは上々のようだ。一緒に取材した担当編集(20代の女性編集者)は、取材前に3種類とも食べていた。
野菜味で「おいしさと健康」を追求したい
江崎グリコの活動を注視すると興味深い。ハメを外しているように見えて、基本を踏まえるのだ。学校の教室に例えれば、アイス業界には学級委員的メーカーもあれば、少しやんちゃなメーカーもある。グリコはやんちゃそうに見えて校則を守る生徒に思える。
「ブランドを買い続けてもらうために、遊び心も必要だと思いますが、本質的な部分は押さえます。当社は『おいしさと健康』が企業理念で、『ユニークネス』な社風もある。開発側もそのバランスをとりながら商品設計を考えます」
野菜味の先行事例となるのが、「パピべジ」だ。「パピコ」の派生商品で、第1弾は「りんご&にんじん」「キウイ&グリーン」を発売。8月24日には第2弾「トマト&オレンジ」が追加投入された。厚生労働省が規定する、成人の1日当たりの野菜摂取目標量の不足分である約62グラムが摂取できるアイスで、人気も高いという。
実は、野菜味のアイスには成功事例がない。2014年にはハーゲンダッツが「スプーンべジ」として投入したが不成功に終わった。グリコは「パピコ」「アイスの実」で野菜アイス市場の確立にも挑む。