在宅勤務中も「粒」ごとに食べられる

「それまで通勤していた人の多くがリモートワークとなり、喫食シーンも変わりました。以前の平日は帰宅後に食べることが多かったのが、自宅勤務となり、朝のフルーツ感覚でアイスの実を数粒食べたり、デスク作業やオンライン会議の合間に食べたりするなど、平日の日中に食べられる時間が増えたのも大きい、と考えています」(若生さん)

自宅ならオンライン通信をしなければ“上司や同僚の目”からも解放されるだろう。

ちなみに以前、アイス専門誌に「家庭内での『内食』が中心となり、自宅の冷蔵庫内・冷凍スペースを冷凍食品とアイスが奪い合わないのか」を聞いたら、こう答えた。

「かつてはその一面もありましたが、冷食の備蓄も一段落した感があります。今年4月のアイスの売り上げは天候不順で伸びませんでしたが、5月以降は盛り返しました」

「カラフル」から「一色」路線で大成功

現在のアイスの実は、アソート(いろんな味の詰め合わせ)ではなく、単品の味を深める。そう変えたのは2013年からだという。

「アイスの実」(写真提供=江崎グリコ)

「1986年、『Candy Ball』という名前で誕生しました。当時は『味の付いた氷』といったシャーベットアイスで、長年、4種類の味が入っていた構成でしたが、7年前に1袋=1つの味に変えました。消費者調査では『好きな味とそうでない味がある』という指摘もあり、指名買いされるほどのファンづくりをめざして、単一フレーバーの味を高めていったのです」(若生さん)

これ以降、売り上げも伸びたそうだ。複数の味を「選んで楽しむ」から、「好きな1つの味を楽しむ」のは、家族構成が変わった時代にも合ったのだろう。全世帯に占める単身世帯(1人暮らし)の割合は2010年に3割を超え、家族と同居していても生活スタイルがバラバラという世帯も多い。「誰かのため」に買うよりも「自分で楽しむ」という個食化に変わった。

そうした消費者意識と向き合い、単一の味を深めることにも力を注ぐ。

「同じシリーズでも、季節の嗜好に合わせて果物を変えたり、果汁の割合を変えたりしています。例えば8月31日にリニューアル発売された秋の『アイスの実 濃いぶどう』の果汁は80%で濃厚に仕上げていますが、さっぱりした味わいが好まれる夏は旬の巨峰を用いて果汁は55%でした」

主力料品の「濃いぶどう」は、季節によって果汁の割合を変えている
撮影=プレジデントオンライン編集部
主力商品の「濃いぶどう」は、季節によって果汁の割合を変えている

実際に商品を買って試食してみた。商品パッケージには「完熟ぶどう使用・果汁80%」という表示とともに「今だけのねっとり仕立て」という文字も躍っていた。生のフルーツは場合によって味の当たりはずれがあるが、アイスの実であれば同じ味が1年中楽しめる。「"本物のフルーツを超えたフルーツ"を目指しています」と同社は力を込める。