「27.8%減」以上の大打撃を被っている業界もある

内閣府が8月17日に発表した4~6月期の国内総生産(GDP)速報値は、予想されたこととはいえ、衝撃的な数値だった。物価変動の影響を除いた実質の季節調整値は、1~3月期と比べて7.8%減だった。年率換算すると27.8%のマイナスで、リーマンショック直後の2009年1~3月期の年率マイナス17.8%をはるかに上回り、戦後最大の落ち込みとなった。

27.8%減という数字は、4~6月期の3カ月が1年続くと仮定した場合の数字で、最終的に2020年暦年や2020年度の年間のマイナスがそこまで大きくなることはないとみられる。政府は7月30日に「年央試算」を公表したが、それによると2020年度の成長率は「マイナス4.5%程度」。リーマンショック時の2008年度の実質マイナス3.5%(名目はマイナス4.1%)よりも影響は大きいと見ているわけだが、せいぜい0%から2%程度の成長しかしてこなかった日本経済からすればただ事ではない。それでもこの見通しは「甘い」という声が上がる。

注意が必要なのはGDPは全体の平均値だということだ。新型コロナ下でも業績を伸ばし設備投資を増やしている企業もある。一方で、GDPの数字とはケタ違いの大打撃を被っている業界もある。旅行業や宿泊業、飲食業など、4月、5月は営業休止で売り上げがほとんどゼロになり、6月の再開後も昨年の半分以下というところが少なくない。

なぜ国交省は「Go To トラベル」の実施を急いだのか

旅行業者の監督官庁である国土交通省が「Go To トラベル」の前倒しにこだわったのも、こうした業界の惨状を放っておけなくなったからだ。もちろん政治家も選挙区の事業者からの悲鳴を聞き、役所の尻をたたいた。東京都民を除外して「不公平だ」という声があがっても、後戻りしなかったのはこのためだ。

だが、この「Go To トラベル」も政策目的とタイミングが大きくズレていた。もともと「Go To トラベル」を立案した段階では、新型コロナが終息した後の、景気回復を後押しする政策だったはずだ。人の移動を活発化させ、景気を一気に元に戻すことが政策目的だった。

ところが、事業者が苦しいからといって、新型コロナが完全に収まっていない段階で、実施に踏み切った。人を動かせば新型コロナ蔓延が日本全国に広がることは初めから想定された。つまり、もともとの政策目的とは違ったタイミングで実施に踏み切ってしまったのだ。これも、国交省が経済対策や感染症対策は自分たちの業務ではないと思っているからで、管轄する事業者をどう救うかだけが先行してしまった結果とみていいだろう。