2004年の参院選以来、選挙では負け知らずだった蓮舫氏が東京都知事選で落選した。評論家の八幡和郎さんは「私が蓮舫氏の二重国籍問題を指摘した際、議員辞職して次の選挙で出直せばよかったのに、その場しのぎの説明で自分の非をごまかし続けた。自分を見つめ直し、地に足が着いた政治家として復活してほしい」という――。
東京都知事選で落選が決まり、会場から引き揚げる蓮舫氏=2024年7月7日夜、東京都千代田区
写真提供=共同通信社
東京都知事選で落選が決まり、会場から引き揚げる蓮舫氏=2024年7月7日夜、東京都千代田区

サンドバックになったまま消えてはもったいない

都知事選で落選した蓮舫氏にバッシングの嵐が吹いている。蓮舫氏は、片っ端から反論して、それがまた炎上を招く事態になっており、さすがに気の毒に思う。

蓮舫氏という政治家を長く観察し続けてきた者として、何が今回の惨敗をもたらしたか、再起するなら何が課題かについて冷静に論じてみたい。女性政治家としても、海外にルーツを持つ政治家(※)としてもパイオニアだったのだから、サンドバッグになったまま消えるのは困るのである。

※蓮舫氏の父親(故人)は台湾出身、母親は日本人

私が2016年に蓮舫氏の「二重国籍」を突き止め、批判を続けてきた経緯は、『蓮舫「二重国籍」のデタラメ』(飛鳥新社)に書いたし、プレジデントオンライン記事「『上級国民の特権』をこれ以上増やすべきではない…日本が『二重国籍』を導入する巨大リスク」でも問題点を解説した。

私の最初の指摘のあと、蓮舫氏は二重国籍を解消させたものの、「知らなかった」「故意ではなかった」と言い続けて民進党代表の座に1年も留まり、上昇気流に乗れないまま辞めることとなった。その際も、反省はあまり口にせず、他人の批判ばかりが多かった。

学歴をごまかす小池氏vs国籍をごまかす蓮舫氏

保守系の人々からは、「ブーメランの女王」とか言われていたが、知名度は健在だったので、立憲民主党は「勝てる候補」と勘違いして都知事選に擁立した(選挙前に離党し、無所属で立候補)。

小池氏には、2期8年の間に大失政はなかったので、現職有利な現在の制度では、打倒はかなり難しそうに見えた。小池都政最大の問題は、新型コロナ対策が典型だが、真摯な努力をするより、豊かな財源を使ったバラマキで誤魔化す手法だ。財政力がないほかの地方自治体にとっても国にとっても大迷惑だった。

だが、これは政府が地域間の財源再配分で対抗すべき問題で、東京都民が投票で是正を迫る問題ではない。

そこで、反小池勢力は、学歴詐称を指摘し攻めたのだが(学歴の粉飾くらいだと思うし、アラブ語のレベルはかなり高い)、「国籍疑惑」を抱える蓮舫氏では迫力がなかった。

政治家にとっては、国籍をごまかすほうが学歴をごまかすより深刻なのだから、蓮舫氏本人が直接、小池氏にその点を追及することはできなかった。

最悪の候補者選択だったし、蓮舫氏も出るべきでない選挙だった。また、二重国籍は、それを解消したら過去はどうでもいいという性格の問題でないし、8年前にきちんとした対応をしなかったので謎がまだ残っており「過去の問題」とも言えない。