「ハードなプロジェクト」の感じ方は人それぞれ

これは「家で過ごす」というプライベートな状況でも同じです。

仕事が早く終わり、家に早く帰れることを、家族と過ごせる、趣味の時間が持てるとポジティブに考える人もいますが、同じような状況でも、家事をたくさん頼まれそうだとネガティブに考える人もいます。最近話題になっている「帰宅恐怖症」は後者のケースでしょう。

次にビジネスの例で考えてみましょう。ハードなプロジェクトに関わっている入社10年目のAさんは、「もう疲れた、イヤになった……」とネガティブに感じるけれど、転職して2年目のBさんは「学べることがたくさんある、成長できる」と考えるかもしれません。

このように同じような状況に対しても、捉え方は様々です。「成長の糧になる」という表現がありますが、前述のAさんにとっては、ハードなプロジェクトはネガティブ・ストレスでしたが、Bさんにとってはポジティブ・ストレスだったように、何らかの刺激を「負荷」と思うか、「糧」と思うか、感じ方は人により異なります。

疲れていると、ストレスに脆くなる

また、同じ人でもストレスの感じ方は、環境や状況によってまったく違うこともあります。たとえば、ふだん温厚な人だけれど、体調が悪いところを無理して出社してきたため、ささいなことに過敏になったり、機嫌が悪くなったりするようなケースです。

武神健之『外資系エリート1万人をみてきた産業医が教える メンタルが強い人の習慣』(PHP研究所)

疲労がたまっていれば、ストレスの強度や持続時間がそれほど深刻なものではなくても、当然、本人のストレスの感じ方は大きくなるでしょう。人は、疲れているとストレスに対して脆くなるのです。

ここまで、ストレスに関する最低限の基礎知識について述べてきました。

「あっ自分もそうだ!」と思ったかもしれません。「だから自分はストレスに弱いんだ……」と落ち込む必要もありません。ストレス耐性は意識や行動によって変化させることが可能です。もともと「ストレスに弱かった人」が、面談を通じて「ストレスにしなやかに対応できる人」に変わっていった事例もたくさんあります。ストレスへの対処は、誰でも学び身につけることができるものだというのが、1万人の働く人と面談をしてきた産業医の結論です。

関連記事
日本人のがん1位「大腸がん」を予防する4つの生活習慣
外資系エリートの産業医が教える、職場の「やっかいな人」に対して平常心を保つための処方箋
不安や弱さを「強み」に変えられる人のメンタル習慣
自粛警察、マスク警察、帰省警察…日本で増え続ける「ゼロリスクおじさん」の正体
現役医師「これからは『コロナは風邪』と割り切る視点も必要だ」