体育館にベッドを並べて臨時の収容施設に

ただこの2つの病院だけでは、全ての患者を収容するには足りなかった。特に問題なのは軽症の感染者で、病床が足りないからといって帰宅させてしまうと、家族や周囲の人々などにうつしてしまう恐れがあった。街なかを出歩く可能性もある。そこで、市内の体育館や国際会議場といった公共施設にベッドを並べて臨時の収容施設とすることに決めた。

早川真『ドキュメント武漢 封鎖都市で何が起きていたか』(平凡社新書)

これを「方艙医院」と呼んだ。「方艙」はコンテナのような四角い箱の意味だ。もとは軍が戦地や災害現場などで野戦病院を設置するときに使われた手法で、トレーラーで運んできたさまざまなコンテナのようなユニットを組み合わせることで、診察室や検査室、入院用の病室などを一気に立ち上げるやり方だ。

武漢の方艙医院は、体育館などの広い空間を四角く壁で仕切り、そこにベッドを並べた。運用開始したのは2月に入ってからだ。市内16カ所に計1万4000床のベッドを設置した。ベッドに敷かれた布団は色がばらばらで、あちこちからかき集めたことがうかがわれた。正式な病院ではないから、症状が重くなった人がいたら指定病院に転院させることにした。政府によると、累計で1万2000人の患者が方艙医院で過ごしたという。

隔離ポイントには、医療スタッフがいないし薬もない

だが患者の収容が全てうまくいったわけではない。武漢の30代の女性は母が1月下旬に発症。病院へ連れて行ったがベッドがなく、2月上旬に医師のいないホテルに入れられた。病院の代替としてホテルなどの施設も「隔離ポイント」に指定され、患者を収容していたのだという。ところが母の容体が悪化して一時呼吸困難に。正式に入院できるまで不安な日々を過ごしたという。

政府の合言葉は「全員収容」。だが武漢の20代の女性は2月中旬、「(政府の)行動が遅い」と共同通信の電話取材に怒りをぶちまけた。父親が検査を受けたところ肺に影があることが分かり、感染が確定したものの、「隔離ポイント」の一つに入れられた。女性は「医療スタッフがいないし薬もない。食事と隔離場所を提供しているだけだ」と非難した。とにかく形だけでもどこかに収容するのが精いっぱいだったとみられる。

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