4月7日、安倍首相の緊急事態宣言を解剖して赤字を入れよう

そこで、このスピーチの段落を、すべて列挙して内容を整理してみよう。段落の内容を簡単にまとめ、番号をつけてみた。

〔1〕医療従事者に感謝します
〔2〕医療現場を守ります
〔3〕医療現場は危機的な状況です
〔4〕緊急事態宣言を七都府県に発します
〔5〕感染を防ぐため外出しないでください
〔6〕五月六日まで外出自粛をお願いします
〔7〕テレワークをお願いします
〔8〕オンライン学習、診療をしましょう
〔9〕外出はよいが「三密」はいけません
〔10〕マスクをして感染を避けてください
〔11〕経済への影響は避けられません
〔12〕一○八兆円の経済対策を実施します
〔13〕中小企業に給付金を出します
〔14〕ロックダウンではありません
〔15〕地方に行かないでください
〔16〕社会機能は維持します
〔17〕全ては皆さんの行動にかかっています
〔18〕不安ですが希望は生まれています
〔19〕現場に復帰する看護師の皆さんがいます
〔20〕力を合わせれば試練を乗り越えられます

全体を読んでみた印象。いろんな内容を詰め込みすぎである。長すぎる。メッセージの本筋がはっきりしない。「しかし」「けれども」など留保が多くて、歯切れが悪い。もっと言いたいことを、ストレートに言えばよい。

橋爪大三郎『パワースピーチ入門』(KADOKAWA)

とコメントすると、安倍首相のスピーチに難癖をつけていると思われそうだ。

そうではない。日本の政治家のスピーチは一般に、ひどいのが多い。安倍首相のこのスピーチは公平にみて、平均点かそれ以上だ。段落のつくり方など、よく考えてある。

みんなが知っているスピーチだから、取り上げるのだ。首相だから、人びとの期待値は高い。きつめの駄目出しがあっても、我慢してもらいたい。

以下、具体的にみていこう。