ルール2・犬歯を喜ばせて本能で食らう
「犬歯を喜ばせる」のは、特に肉を食べるときには重要なルールです。ステーキや焼き肉、唐揚げ、生姜焼きなど、肉料理は犬歯で食いちぎるように食べます。
今度、ステーキを食べるときに試してみてください。①ナイフで一口大に切って食べる、②一口で嚙み切れないような大きさの肉を犬歯で食いちぎってから食べる――②のほうが味を強く感じませんか? ①の一口大にカットして食べると、そのまま奥歯で嚙み締めることになります。もちろん、それでもじわりと肉の旨味を感じられるのですが、②のように犬歯で食いちぎると、肉の繊維をより強く感じ、歯茎で旨味を感じるような気がします。人間という動物の本能が喜ぶ旨さを感じるのです。
とはいえ、高級レストランやデートの際にこれをやると、店のスタッフの眉間に皺が寄ったり、相手の女性が二度と会ってくれなくなるというリスクがあるのでご注意。
ルール3・間接風味づけのテクニック
どんな料理も最初はそのままの状態で食べるのが基本です。ただし、その後に味わいをさらにアップするためにちょっとした技を使うこともあります。「間接風味づけ」もそのひとつ。
通常、途中で味わいに変化をつける場合には、調味料などを加えるのが一般的です。ただし、調味料などの香りや味に口の中が支配されては意味がありません。特に強い香りや味わいのものは要注意です。
前回説明したように、たとえば鰻重を食べるときには、蒲焼をちょっとめくってご飯に山椒をふります。口の中がいきなり山椒の強い風味に支配されるのを防ぐのです。
あるいは卵掛けご飯であれば、通常は卵に醬油を垂らして、かき混ぜてからご飯にかけますが、これも卵のピュアな味わいが醬油に負けてしまうことが多いのです。そこで、ご飯に醬油を垂らし、少し混ぜてから卵をかけます。醬油の香りがついたご飯を卵でコーティングする感じ。これで、卵そのものの味を味わいつつ、ご飯と醬油との絶妙の相性が楽しめます(醬油がついた米とついていない米が混在することで、味わいのグラデーションも楽しめます)。
さらに時間に余裕のある方は、卵は卵黄と卵白に分け、醬油をかけたご飯と卵白を混ぜ合わせておいてから、卵黄をのせ、崩しながら食べてみてください。これで、さらにきめ細かな味わいのグラデーションが完成します。
ちなみに、途中で調味料などをちょい足しして味わいを変えることを「味変」と呼びますが、味に飽きるのを防ぐような、消極的な感じがして個人的にはちょっと違和感があります。「間接風味づけ」は、味わいをどんどん向上させるためのものですから。