“その筋”っぽい人も医療用マスクを買い付けに

しかも、一般向けのサージカルマスクと異なり、医療用マスクは、米化学大手3M社の中国工場が今や中国による事実上の“国有化”状態とあって、今もひっ迫状態は変わっていない。「冗談ヌキで、3M社のN95マスクなんかは宝探しのような状態。手術の際は30分に1枚の使い捨てするものなのに、今でも1枚600円で買い手はつく」(同)。

「ブローカーらが見るサイトがあるんですが、先日まではそこに『あした成田にN95が1000万枚着くらしいぞ』といった情報が書き込まれると、億単位の札束を積んだ現金輸送車がブツを押さえるべく成田の近隣に何台も出向いてきて、そこには普通の人も、“その筋”っぽい方も群がっていました(笑)。しかし、最近は来るといっても来ないから、小競り合いしながら皆あきらめている」(前出・交易業者)

では、ここで少し時間をさかのぼって、新型コロナ発生以降の国内外のマスク市場に、いったい何が起こっていたのかをたどってみよう。先行きを推測するには、まずこの間の波乱万丈の経緯を見ておく必要がある。いったん医療用マスクは除外して、一般向けのサージカルマスクのみに絞ってゆく。

「中国製はイヤ」と、他国の箱に入れ替えて仕入れる

年初から中国・武漢を発端に国内で感染が急拡大、マスクの需要も同時に急増した。「2月以降に中国とWHOがマスクと消毒液スプレーの輸出を止めた。中国国内の工場は、生産能力の高いところから順番に中国政府やWHOに押さえられていきました」——前出の医療コンサルタントがそう語る。「日本の大手メーカーのOEM工場もいくつか押さえられ、輸出できなくなりました」(同)。

2月といえば、日本では月初からダイヤモンドプリンセス号乗客の集団感染が連日報じられていた頃。北海道内の自治体や医療機関が計5万枚以上のマスク、4万セット以上の防護服を中国に寄付したのはその中旬頃だ。欧州は「まだ対岸の火事のような状態」(同)だったが、米国からは3月に感染が急拡大する直前の2月の終わり頃にバイヤーたちが中国入りして、3月初めには工場を押さえ始めたという。

「米国では中国製を嫌がるユーザーが多く、『箱を他国のものに替えてくれ』というオーダーもあった」。そこで、他国の企業や第三国をいくつか経由し、中国産とわからぬように空輸した。経由地は様々だが、多くは韓国や日本の成田空港だった。