車で15分ほどの山上から洞爺湖を望む。橋本さんはブログにここからの風景写真をアップしている。橋本夫人も「季節移民」生活を気に入っているという。

田舎暮らしの費用はいかほどなのか。

「小金井に自宅を残したまま田舎暮らしをしてますから二世帯の生活費を負担しています。両方合わせて月に70万くらいでしょうか。東京の家は持ち家ですから家賃はかかりませんが、留守の間を見てもらっているお手伝いさんの費用が大きい。もし、東京の家を20万くらいで貸して、通年、ここに住めば生活費は安くなる。年金(ひと月約26万円)で、お釣りがくるんじゃないかな。僕のコンセプトは『田舎で都会生活』なんです。妻も僕も東京生まれの東京育ちだから、農作業をしたいという気持ちはありません。きれいな空気と自然のなかで都会と同じように趣味を楽しむ生活をしたい。ここにいたら涼しいし、夜、窓を開けたら満天の星が見えるのですから……。

ただ、こうした都会と田舎半分ずつの生活も70歳までかなと思っています。だんだん体力的にきつくなるでしょうから。70を過ぎたら、小金井の家を売って都心に小さなマンションでも買おうと思います」

最後に移住を考える後輩へのアドバイスを聞いた。

「ふたつあります。ひとつは移住先の人と話をするとき、過去の自慢話をしないこと。サラリーマンで偉くなった人に多いけれど、『オレがあの仕事をした』『あの社長とは懇意だった』などの話をすれば嫌われるだけ。次第に相手にされなくなる。私も3年前の肩書の名刺を出す人に会ってびっくりした記憶がある。昔の話はよしなさい。

もうひとつは仕事から離れたら、その日から『日経』をやめること。仕事を忘れて自分の人生を楽しむことです」

(撮影=本田 匡・橋本忠男)
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