食を愛する人々が一度は憧れる、「料理人」という仕事。閉店後の店のキッチンで料理人が頭を抱え、次なるメニューのアイデアをあれこれと思案する――というドラマや映画のワンシーンが頭をよぎる人も多いかもしれません。
しかし、現実はそういったイメージとかけ離れており、日々の仕事の9割は“名もなき雑用”が占めていると、人気南インド料理店「エリックサウス」などを手がける料理人・飲食店プロデューサーの稲田俊輔さんは語ります。
ルーティンワークや雑用の中にも、キャリアアップや自己実現につながるカギはあるのでしょうか。飲食業に限らず、さまざまな業界で働く若手ビジネスパーソンにとってヒントとなる稲田さんの仕事論をお聞きしました。
「名もなき雑用」でもオリジナリティは発揮できる
――稲田さんは料理人としてのキャリアを長く歩まれていますが、世間で語られている飲食業や料理人のイメージで「実像とかけ離れている」と感じるものはありますか?
稲田俊輔さん(以下、稲田):世間では「料理人=料理をする仕事」だと思われていますよね。もちろんそれは間違っていませんが、実際は料理人の仕事において料理そのものが占める割合は半分以下なんです。仕事の大半を占めているのは「名もなき雑用」で、新しい料理をクリエイトするのは、仕事のほんの一部に過ぎません。