コロナで人気が上昇した日本維新の会に戦々恐々
もう1つのポイントは、コロナ対応で人気が上昇した大阪府の吉村洋文知事が副代表を務める日本維新の会との関係にある。維新の政党支持率は世論調査によっては野党第1党の立憲民主党を抜き、マスコミで吉村氏を礼賛する報道が目立っている。最近では、保守系言論人らが主導する大村秀章愛知県知事のリコール(解職請求)運動に吉村氏が“電撃参戦”し、ツイッター上で大村氏との「バトル」を展開。7月5日投開票の東京都知事選でも、自民党幹部が支援する現職の小池百合子都知事に維新が対抗馬を擁立し、「吉村人気の勢いをかりて、維新が愛知県と東京都を乗っ取りにきている」(全国紙政治部記者)とまでいわれるようになっている。
これまで自民党と維新は、同じ保守政党として立憲民主党や共産党と対峙し、左派勢力との戦いで連動してきたが、政党支持率が高まるにつれて維新が本格的な「全国展開」を目指す中、両党は各種選挙でガチンコ対決を余儀なくされる。菅官房長官は維新創業者の橋下徹元大阪府知事や松井一郎大阪市長との良好な関係を崩していないが、内閣支持率や自民党の政党支持率が低下する今、これまでと同様の対応をしていけば維新を利することにつながり、自民党内にはその反動から「菅包囲網」が出来上がる可能性も指摘される。
「安倍・麻生VS菅・二階」の全面戦争
ある自民党中堅議員は「テレビに出ているコメンテーターは『維新寄り』の人物も多く、ワイドショーからスポーツ紙まで維新を持ち上げる報道が目立っている。1日も早く維新と決別し、徹底的に維新を潰しにかかるべきだ」と憤り、自民党ベテラン議員も「自民党が本気で戦わなければならない相手が維新になったのは間違いない。自民党大阪府連を政権や党本部が全力で支え、総選挙で維新と対峙していく必要がある」と語る。
3つ目のポイントは、「ポスト安倍」をめぐる動きが活発化している点だ。各種世論調査で「次の総理にふさわしい政治家」のトップを走る石破茂元幹事長は「けじめがついたら職を辞すのも1つの在り方だ」などと安倍総理批判を繰り返してきたが、最近はその言動が激しさを増してきている。6月8日には党最高実力者の二階俊博幹事長と会談し、石破派の9月の政治資金パーティーでの講演を依頼。今月10日発売の月刊誌『文藝春秋』のインタビューでは、菅官房長官を「地方への熱い思いを持っている」と評し、秋波を送った。菅氏はこの点について6月10日の記者会見で「個々の記事へのコメントは控える」と煙に巻いたが、もしも石破氏が二階派や菅グループの支援を受けて次の自民党総裁選に臨むようなことがあれば、それは「安倍・麻生VS菅・二階」の全面戦争を意味する。