6月19日、ついに政権が動きだした

政権トップとナンバー2が同じ釜の飯を食うのは当たり前のように見えるが、昨年秋以降にあらわれた2人の亀裂は今年に入って深刻化していたからだ。総理最側近の今井尚哉総理補佐官ら「チーム安倍」と、菅氏側近の和泉洋人総理補佐官ら「チーム菅」の摩擦はコロナ危機下でも目立ち、「両チームは情報共有をしないどころか、陰で互いを批判する険悪な雰囲気」(官邸関係者)になっていたとされる。

この会食が注目される理由は、2012年末の第2次安倍政権発足から一貫して安倍総理を支えてきた麻生太郎副総理兼財務相、甘利明党税調会長(前選対委員長)といった盟友が同席する点にある。この2人と菅官房長官は、消費税増税の判断や地方選への対応などで意見を異にしてきた経緯があり、「ポスト安倍」をめぐる対立も表面化している。安倍総理や麻生副総理らは岸田文雄政調会長への「禅譲」を練るのに対し、菅官房長官は岸田氏を評価せず、他の候補を模索する姿勢を崩していない。

「もう疲れたよ…」と漏らす安倍晋三

関係がこじれた4人が顔を合わせざるを得ないのは、それだけ安倍総理が危機感を持っていることの証左だろう。そのポイントは3つある。1つ目は、6月17日に閉会する通常国会の直後に、自民党の河井克行前法相と案里参議院議員夫妻への立件が予想されていたことだ。夫の克行氏は菅官房長官に近く、昨年9月の内閣改造時に菅官房長官が法相にねじ込んだとされる「チーム菅」の筆頭格といえる。昨年夏の参議院選挙で地元政界に現金を配った疑惑をめぐり、検察当局は詰めの捜査を急いでおり、6月18日に公職選挙法違反(買収)の疑いで、河井前法相夫妻を逮捕した。

新聞記者らとの「賭けマージャン」発覚で辞任した東京高検の黒川弘務前検事長をめぐる問題や、コロナ対応で支持率が急落する中で河井夫妻の疑惑が直撃すれば、安倍政権を揺るがす大ダメージになるのは必至で、この局面は政権の最重要人物で腹を合わせるタイミングとの判断に傾いたようだ。安倍総理は最近、周囲に「もう疲れたよ……」と漏らすシーンもあり、自身の退任時期や「ポスト安倍」を含めた意向が示されるタイミングが近づいているとの見方が出ている。