3万人以上が引っかかった2度めの攻撃

そして、この元サイバースパイは、また別のケースについて話を始めた。

冒頭のスピアフィッシング・メールで9000人以上が被害に遭ってから10日後、再び「無料チケットオリンピック」というタイトルの怪しいメールが、今度は日本人46万人に対して送りつけられた。メールの内容は、やはりオリンピックに絡んだものだった。

「東京2020夏季オリンピック(19500円)への無料航空券をおとどけします
東京2020ゲームに興味を持っていただきありがとうございます
詳細を登録するには、下のリンクをクリックしてください
www~(ウェブサイトのリンク)
さらに、オリンピック商品を購入できる68000円のギフトバウチャーがプレゼントされます」
(原文まま)

前回よりも日本語が流暢なのがわかる。このメールは、46万人中3万人以上がクリックして、マルウェアに感染したことが判明している。

山田敏弘著『サイバー戦争の今』(ベスト新書)

このようなサイバー攻撃は、日々世界中で発生している。被害が表沙汰になるものだけでなく、表面化しないケースや、被害者が攻撃に気づいていないこともある。国家なら安全保障の問題で攻撃被害を明らかにしない場合が多いし、民間企業なら株主や取引先を意識して、攻撃を内々で処理してしまうという由々しき現実もある。

ただはっきりと言えることは、世界中でありとあらゆるサイバー攻撃が起きており、間違いなく、数多くの被害が出ているということだ。機密情報の漏洩や、知的財産を盗むスパイ工作、金銭目的の大規模犯罪、他国への選挙介入工作、インフラ施設や軍事関連施設への破壊工作など、枚挙にいとまがない。

そして今、サイバー攻撃は、国家間の摩擦を生み、戦争の形を変え、国の政策にも多大なる影響を与えるまでの大きな課題になっている。

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