感染拡大をすべて中国のせいにしたいトランプ米大統領

「犬猿の仲」とはまさにこの2人を指すのだと思う。アメリカのトランプ大統領と中国の習近平(シー・チンピン)国家主席のことである。さしずめ、ツイッターでよく吠えるトランプ氏がイヌで、それに対して顔色も変えない狡猾な習氏がサルといったところだろう。

トランプ氏はアメリカでの感染拡大をすべて中国のせいにして11月の大統領選を乗り切ろうと画策している。習氏は巨大経済圏構想「一帯一路」を推し進め、アメリカを押しのけて世界制覇をもくろんでいる。

2人の対立が激しさを増すなか、WHO(世界保健機関)の年次総会が日本時間の5月18日午後7時から開幕した。最大の焦点は、新型コロナウイルス感染症への対応だ。194の加盟国が参加し、3密を避けてテレビ会議方式で行われた。会期も5日間から2日間に短縮された。

海外メディアとの記者会見で、世界保健機関(WHO)総会への参加を訴える台湾政府の新型コロナウイルス対策本部トップの陳時中・衛生福利部長=2020年5月6日、台北市
写真=時事通信フォト
海外メディアとの記者会見で、世界保健機関(WHO)総会への参加を訴える台湾政府の新型コロナウイルス対策本部トップの陳時中・衛生福利部長=2020年5月6日、台北市

事務局長の母国エチオピアは中国から巨額援助を受けている

WHO総会初日の冒頭、中国の習近平氏は「中国は透明性をもって情報を提供してきた」と演説し、感染情報の隠蔽はないと反論。WHOに対しては「テドロス・アダノム事務局長の指導のもと、国際的な感染対策で多大な貢献をしてきた」と褒めたたえ、「WHOは中国寄りだ」と主張するアメリカを牽制した。

これに対し、アメリカのアレックス・アザール厚生長官は「少なくとも1カ国は、新型コロナウイルスの発生を明らかに隠そうとして透明性を保つ義務を踏みにじり、世界に大きな被害を及ぼした」と中国を攻撃。WHOについては「必要な情報を得ることに失敗した。結果的に多くの人命を犠牲にした」と批判するとともに「これまでのWHOの対応を検証し、改革する必要がある」と訴えた。アザール氏は台湾の総会参加の議論が先送りされたことも触れ、「台湾の効果的かつ模範的な防疫対応について国際社会が学ぶべきであり、参加を認めることは重要だ」と述べた。

アメリカと中国がこれだけ対立する状態で、感染拡大の防止に向けて対応をまとめることができるのか。先行きが不安である。トランプ氏の自国第一主義も、習近平氏の中国共産党一党支配政治も、私たちの未来を暗くする危険性がある。

WHOのテドロス・アダノム事務局長の母国エチオピアは中国から巨額の資金援助を受け、テドロス氏がWHOトップに選ばれたのは中国の力によるものだとの見方が強い。テドロス氏率いるWHOが批判を受ける背景には、こうした事情もある。

しかしながら、米中が対立を続ければ、パンデミック(世界的大流行)は収束しない。いまこそ、国際社会が連帯の重要性を示すべきだ。