マスクには4つの重要機能がある
もう一つ、誤解が蔓延しているのが、「新型コロナウイルスの感染は、マスクで予防できない」という考えだ。
その原因を生み出したのは、一部の医師が論文を無批判に紹介したためだと、大西准教授は考えている。
「エビデンスレベルの高いとされる論文に、高規格のマスクを装着してもインフルエンザに感染したという結果を受けてマスクに効果はないという結論が述べられていました。しかしこれらの論文では、被験者が自宅でマスクを外した時の感染リスクを考慮していない点や正しくマスクを付けられているかを検証していないものもあります。高規格マスクでも正しく着用ができていないと、隙間から粒子が相当量入り込んでしまうのが常です」
大西准教授は、マスクには、次の4つの重要な機能があるという。
2.感染している人のウイルスを拡散しない
3.喉の保湿と粘膜の保護(※ウイルスに感染しづらくなる)
4.ウイルスで汚染された手で顔を触らない
「マスクに意味がない、意味がある、という二元論で考えてしまう傾向があります。例えば、漏れ率のデータを見て、それならマスクに意味はないと結論づける人がいますが、4つの機能のうち、2つでも効果があるなら、それだけリスクを減らすことができる。性能が高いマスクの装着がベストですが、もし無いなら布マスクでも付けない選択肢はないと思います」(大西准教授)
ベトナム製アベノマスク、つけたら耳が変色…
新型コロナウイルスの感染を予防するという目的は、機能の「1」になる。それを確実にするには防じんマスクになるが、一般には入手困難な製品だ。それなら、不織布の「PFE」「BFE」などの遮断率試験をクリアした、サージカルマスクを選び、顔にフィットさせて装着する。
今年3月中旬から4月までの、どのようなマスクも入手が困難な時期であれば、アベノマスクや手作り布マスクも意味があった。上記の4つのマスク機能のうち「3」と「4」としては、一定の効果があるからだ。しかし、不織布のマスクが流通している現在、あえて布マスクを選択する意義はないだろう。
アベノマスクの中には、耳掛け部分が全く伸縮しないベトナム製マスクも存在している。この事実を教えてくれた介護事業者は、ベトナムマスクを装着してみせてくれた。すると、無理に耳にかけたせいで、先端がじんわりと赤黒く変色していく。私は急いで写真を撮って、ベトナムマスクを外してもらった。
誤解を避けるために付け加えると、ベトナムでは排気ガス対策として布マスクが普及している。現地の事情に詳しい人に聞くと、耳掛け部分がゴム製のマスクもあると言う。だから、ベトナム製だから問題なのではなくて、新型コロナ対策としてのマスクには、ミスチョイスだったということなのだ。