会社組織が多かれ少なかれ居場所となっていた人たちが居場所を失い、孤立していく——。今後増える可能性があるのは、コロナによる死亡リスクよりも、社会的排除による自殺リスクなのです。人は金銭的に生きるのが難しくなることよりも、希望を失うことで社会に参加する動機が失われやすいのです。
事実、厚生労働省が発表した「社会的排除にいたるプロセス~若年ケース・スタディから見る排除の過程~」という調査によると、生活困難に最も直接的につながっていると考えられる潜在リスクとして上位を占めるのは、「本人の精神疾患」「職場環境の問題の中で初職の挫折、不安定就労(頻繁な転職)」「生活環境」など。精神的不安定はそのまま社会からの排除の入り口となる可能性があるのです。
「戦う場所」と「努力の方向」を定め、自分の身を守った成功例
では、コロナショックが起きている現在において、私たちはどのような方策を打てばよいでしょうか。それは、"いま社会(企業)で必要とされていること"を読み取り、実行することにほかなりません。
あるアパレル業界のデベロッパーで14年間勤務していた40代男性のエピソードをお話しします。彼は、19年メディカル系のデベロッパーに転職を果たしました。その背景にあったのは、ECの台頭。アパレル業界は実店舗での売り上げが伸びにくくなり、近年、イオンなどの大型ショッピングモールでは、クリニックなどメディカル領域のスペースを拡充している動きがあります。
そこで、彼はアパレル業界で培ったデベロッパーとしてのノウハウや人脈を、成長市場である医療分野に切り替えて転職したのです。
なぜアパレル業界の経験が活かせるのか? そう思った人も少なくないでしょう。
彼を面接した担当者によると「彼はアパレル業界のデベロッパーで培ったタスクや人員配置の効率化のノウハウを持っていただけでなく、友人のMR(医薬情報担当者)に事前に話を聞き、弊社に就職した際にどのようなことができるかまでの提案をしてくれた姿勢が素晴らしかった」と述べています。
つまり、これまでの自身の強みをアピールできたことに加えて、すでに転職先の業界を研究し、自分が転職先で提供できる価値や業務を提案することまでできていたのです。