保健所は、感染症と健康危機対応の最前線
保健所は、地域における公衆衛生の向上と増進を図るための機関で、地域保健法(以前は、保健所法)に基づいて設置されている。保健所が実施する14の事業の中に、「エイズ、結核、性病、伝染病その他の疾病の予防」があり、感染症が発生すると保健所が対応する。また、日頃から、感染症が発生しないような予防活動と次への備えを感染症法に基づいて行っている。さらに、2001年に策定された「地域健康危機管理ガイドライン」で、保健所は、地域における健康危機管理の中核的役割を果たすと位置付けられている。
保健所は、地方自治体のうち、一定の要件を満たす自治体が設置できる。全国の保健所の総数は2020年4月現在、都道府県立355、指定都市(20市)立26、中核市(60市)立60、その他政令市(5市)立5、特別区(23区)立23、合計469カ所で、他に、支所が121カ所ある。全国をカバーしているものの、1994年3月に848カ所あったものが、地方自治体の行政改革による定数削減によって保健所の集約化が急速に進み、ほぼ半減してしまったというのが現状である※ )。
一方で、公衆衛生の専門機関として多様な職種が協働していることが、強みの一つである。例えば、2017年度末時点で、全国の保健所の常勤職員数は2万7902人。そのうち、保健師は8326人(29.8%)で、大きなマンパワーであるが、他にも、医師、獣医師、薬剤師、食品衛生監視員、環境衛生監視員、医療監視員等々の専門職がそろっている〔地域保健・健康増進事業報告(地域保健編 第2章 保健所編)〕。
※厚生労働省健康局健康課地域保健室調べ:設置主体別保健所数(令和2年4月1日現在)
管轄内で感染者が見つかれば現地調査へ
このため、感染者が発見されれば、即座に専門職種が集まり、その時点での情報を共有し、初動時の体制を組むことになる。通常は、保健師と、その問題に関わりそうな専門職(環境が関わりそうならば環境衛生監視員)が現地に行く。患者に会って状況を確認し、行動調査をして感染に至った経緯を調べ、必要時は隔離する。同時に、感染を広げないように周囲の人々に注意を促す。現地調査終了後再度情報を共有し、方針を点検しながら終息するまで繰り返す。
なお、保健所が実施する14の事業の中で、第6項は「保健師に関する事項」とのみ記されており、職種名が入っている。保健師は対人保健サービスの最前線に立ち、社会のニーズに応じて柔軟に対応することが求められ、一律に仕事内容を規定できないためで、保健所には不可欠の職種であることを示している。