新型コロナウイルスの感染がわかったとき、真っ先に対応するのが全国の保健所だ。フリーライターの橋本愛喜氏は「病院に比べて保健所の窮状はあまり注目されていない。だが現場の状況は深刻だ。特に人口10万人あたりの職員数が全国最少の大阪は逼迫している」という――。
仕事に戻ろうとマスクを着けなおす女性が映る窓に、オフィスビルも写り込んでいる
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コロナ対応の要…保健所は減らされ続けてきた

「コロナウイルス感染拡大が始まった頃、保健師の逼迫ひっぱくぶりが取り上げられるようになりましたが、保健師の数は元から全く足りていません」

こう訴えるのは、大阪府の職員で「大阪府関係職員労働組合」委員長の小松康則さん(49)だ。

小松さんは11月、オンライン署名サイト「Change.org」で大阪の現状を発信。多くの人たちから賛同を集めた。

「この時間、この後の時間、そして僕が眠っている時間も、命の最前線で身を粉にして、いろんなものを犠牲にして働いているたくさんの保健所職員、府職員、労働者がいます。まだまだ小さな声かもしれないけれど、声を上げ続けることできっと届く、きっと変わると思っています」

コロナに忙殺される保健所…その役割とは

1991年から2018年の間に、全国の保健所は45%、職員も19%減った。

これまで小松さんは大阪府との交渉で、今の職員の数では災害などの危機が起きた時に必要な対応ができなくなると再三訴え続けてきた。しかし、返ってくる答えは毎度「条例で決まっている」「公務員を増やせば府民から反発の声が出る」ばかりで、その声は全くくまれてこなかった。