3連休のお花見に世界が驚愕
仏系防疫は親日として知られる台湾でも複数のメディアによって「これまで日本の『真面目』『規律正しい』というイメージが損なわれ、またこれまで培ってきた国際的な信用を落としかねない」と手厳しく論じられた。
日本のコロナ対策では感染爆発が起きるのではないか。そう案じられていたところ、海外から驚きの声が上がったのは3月下旬のことだ。3月20~22日の3連休に上野公園など桜の名所で人々が花見をする姿が報じられたのである。たとえばフランスのAFP通信はその様子を「警告にもかかわらず桜を楽しむ日本人」と報じ、香港メディア「香港01」も「なぜ政府は花見を阻止しなかったのか。感染症学の角度から見ても理解しがたい」と疑問を呈した。
その連休が終わった直後、東京の感染者数は3月25日を境に増加。感染者数を示すグラフは右肩上がりどころか、Jの字を書くような指数関数的な増加に転じ、4月4日には1日の感染者数が100人を超えた。そして連休から約2週間後の4月7日に安倍晋三首相から「緊急事態宣言」が出されるに至っている。
因果関係ははっきりしないものの、このタイミングは、WHO(世界保健機構)やCDC(米国疾病予防管理センター)が公表している新型コロナウイルスの潜伏期間「1ないし2~14日」と合致している。海外のネットユーザーから「ああ、やっぱり」という声が聞かれたのは無理のないことだろう。
自主解禁ムードに専門家も警鐘
あの3連休の時期、緊張していた空気が一瞬ゆるんでしまった。読者にもそんな心当たりがある人もいるのではないだろうか。そのきっかけとして考えられるのは3月19日にそれまで感染者が続出していた北海道において独自の緊急事態宣言が終了、また政府から全国の小中学校へ出されていた臨時休校の要請も解除されるという報道があったことだ。これらのニュースを踏まえたうえで、厚生労働省クラスター対策班のメンバーで北海道大学大学院の西浦博教授は「市民の間で『解禁ムード』が広がってしまっていることを大変危惧しています」と医療従事者向けサイト「m3.com」で警鐘を鳴らした。
たしかに思い起こせば、連休直前は新型コロナウイルスの流行が落ちついたという発表があったわけではなく、むしろ桜の名所では「宴会は控えてください」という案内が出ていた頃だ。それでも流れが自主解禁に傾いてしまったのは、「自粛の要請」があくまで「お願い」であり、自粛を続けるか出かけるか、解釈と判断が個人にゆだねられたためではないだろうか。
海外で花見のニュースが驚きをもって報じられたのは、「桜に酔いしれる日本人の能天気さ」というより、「規律正しいと考えられていた日本人でも、長期にわたる自粛要請は耐えられないのかもしれない」という点なのかもしれない。