政府の自粛要請を受け入れない「不届き者」は制裁されても仕方ないのか。文筆家の御田寺圭氏は「先の見えない不安を解消するため、自粛に従わないという『悪』を攻撃することで、安心を得ようとしている。それはたしかに感染拡大の防止に役立つが、他方で失うものも大きい」という——。
緊急事態宣言発令後の週末を迎え、日中より閑散とする夜の渋谷スクランブル交差点=2020年4月11日
写真=日刊スポーツ/アフロ
緊急事態宣言発令後の週末を迎え、日中より閑散とする夜の渋谷スクランブル交差点=2020年4月11日午後7時17分ごろ

自粛しない人は「犯罪者」「極悪人」とみなされる

「外出・接触8割減」のスローガンのもとはじまった、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐための「自粛」要請。市民社会はその要請に応じ、街は人どおりが少なく閑散としており、閉ざされた店の入口には「一時休業」の張り紙が目立つ。

現在のところ、政府や自治体から発信されているのは、あくまで「自粛要請」というお願いベースの申し出に過ぎないものである。「お願い」である以上、本来ならばこちらにはその申し出を断る自由があるはずなのに、そのお願いを聞き入れなかった者は、まるで社会の法秩序を逸脱した犯罪者・極悪人であるかのようにみなされ、市民社会から「私刑」される——そのような相互監視的な同調圧力によって、緊迫感と閉塞感が高まりつつある。

新型コロナウイルスの感染拡大にともなう緊急事態宣言が出ている中、スポーツクラブが営業していることに腹をたて、入口を蹴って壊したとして男が逮捕されました。(中略)調べに対し「緊急事態宣言が出ているのに営業していて、頭に来た。店員に文句を言ってやろうと思ったのに出てこないからドアを蹴った」と話しているということです。

(日テレNEWS24『“宣言出ているのに営業”腹立てドア破壊か』2020年4月10日より引用)