投資先は聖地バンガロールだけでなく目的に応じた都市選定を
玉石混交のスタートアップからどう投資先を選べばいいのか。その一つの解が「どこが投資をしているか」に着目することだ。高成長を遂げたスタートアップには初期から有力な企業やベンチャーキャピタルがバックアップしているところが少なくない。
インドのさまざまな都市に目を向ける必要もあるだろう。かつて、インドのスタートアップの聖地と言えばバンガロールだったが、いまやインド各地で魅力的なスタートアップがいくつも生まれている。
ナスコムのリポートによると、2017年の都市別のスタートアップ数を見ると、最も多いのがバンガロールで約1400社。インド全体のスタートアップに占める割合は27%となっている。次いでデリーの約1300社(25%)、ムンバイの約830社(16%)が占める。
大都市が中心ではあるものの、人口400万人未満の「ティア2」「ティア3」と呼ばれる都市でも、多くのスタートアップが生まれている。
南西部のプネーには約260社、西部のアーメダバード、北部のジャイプールにもそれぞれ100社のスタートアップがある。
さらに2018年には上位3都市の占める比率は下がっており、2017年の68%に対し、2018年は60%となっている。
都市ごとにスタートアップの特徴も異なる。例えば、フィンテックであれば金融の中心地であるムンバイが強い。巨大ハイテク都市に成長中のハイデラバードもIT系のスタートアップの拠点になっている。
このような状況下でも、いまだに多くの日本企業はバンガロールにしか目が行っていないようだ。AIの開発など、IT系では依然としてバンガロールがリードしているやもしれないが、すでに投資マネーの流入はデリーの伸びが大きくなってきていたりもする。スタートアップはバンガロールという一元的な考えだけではなく、状況に応じてエリア選択を考えていく必要もある。
新興国での展開に抜本的な見直しが必要
これまで、日本企業では海外の市場開拓をできる人材が少なく、同じようなメンバーが国や地域を順番に担当していくことが多かった。そのため、2015年以降の「第二次インドブーム」では2003年~2006年頃、私が中国でビジネスをしてきた時の知人とよくインドで遭遇した。
ただ、中国など、他地域で販売して好調だったものをインドに持って来れば成功するという2010年代前半くらいまでのやり方はもはや通用しない。
EC(電子商取引)の発達で流通の形態が激変するなど、デジタル化が急速に進んだため、数年のうちにビジネスモデルそのものを見直さざるを得なくなっている。
この変化に対応できている日本企業は少ないように感じている。時代に適したビジネスモデルへの転換が常に求められており、新興国での事業展開の仕方については抜本的な見直しが必要だろう。