異国の文化とそのメッセージは真似してもいい、使ってもいい。でもその前に、文化の背景にある歴史を知ってリスペクトした上で使うべき。これは当然のこととはいえ、その線引きがどこにあるのかは微妙な問題でもある。しかしだからこそ、こういう論争が、文化への知識を求める動きや、相互理解につながるという声も多い。
ここでイギリスのSuperdryに話を戻すと、ロゴを日本文化の盗用と呼ぶのは厳しすぎるという声も多い。彼らのクールさは日本語をロゴに使っていることに尽きるが、それにより多くの消費者が日本のブランドだと誤解していた。
ブランドが日本のものではないと知り、しかもヘンな日本語と使っていると分かった時、トランスペアレンシーを求める若い世代は裏切られた気持ちになり、「日本のブランドのふりをしている偽物」「文化の盗用」という感覚を持ってしまうかもしれない。こうした消費者心理が最近のブランド不調にますますマイナスに働く可能性もある。
「日本人がポジティブな日本語をもっと発信すべき」
では、どうすればお互い納得できる形で異文化や異言語を使えるのだろうか? 答えは実はとてもシンプルだ。
冒頭で変な日本語Tシャツを見つけたラボのメンバーはこう言う。
「間違えるのは日本人を雇ってないから。もっと日本人を雇えばいい」(メアリー)
これは日本人がやってしまいがちな、間違った英語Tシャツに関しても同じ。もっと英語がわかる人を雇えばいいわけだ。
他者の言語や文化を正確に使うためには、その国の人に聞けばいい。このシンプルな解決法は、これだけグローバル化が進んだ今、それほど難しいことではない。逆にそれができないというのは怠慢であり、言い訳にすぎないと思われてしまう時代がもうやってきているのだ。
これはTシャツのロゴだけでなく、ウェブサイトなどあらゆるコミュニケーション手段に当てはまる。英語サイトはあってもその英語が間違っていると、ブランドイメージに傷がついてしまう。笑われているうちはいいけれど、「変な英語を使うアパレルブランド=ダイバーシティに鈍感」という評価を受けかねない事態が近い将来待っているかもしれない。
最後はラボのメンバーからのこんな素敵な提案で締めくくりたい。
「もっと日本人が、日本語を入れた商品を作ればいいと思う。キャッチフレーズとかを漢字で、それも意味がある内容、ポジティブなメッセージを入れたものを作ってほしい」(ミクア)
日本人が日本語でポジティブなメッセージを世界に発信する。それは新たなビジネスチャンスであるだけではない。日本語の持つ、漢字がクールというだけでなく、そこに込められた深い意味も世界の人に理解されれば、それが新たな文化交流の手段にもなっていくに違いない。