「実は私も以前はよく探し物をしていました。不動産の仕事は扱う書類が多いので、机の上にどんどんたまっていきます。そして、以前は1分で処理できる書類を30分以上も探していることがありました。そこで書類を『未読のもの』『確認済みで自分が処理すれば終わるもの』『確認済みだが、顧客などのレスポンスが必要なもの』『後はファイルにしまうだけのもの』の4つに分類してみたのです。そして机の端に分類した書類の定位置をつくり、付箋でラベリングするだけなのですが、いまでは30秒程度で必要な書類を見つけられるようになりました」(若杉さん)

全体時間の30%が探し物などでムダに

確かに、書類に限らずデスクまわりを常に片づけておけば、探し物で時間を浪費せずに済む。しかし、なかなか実行できないのも事実。

そこで片づけの極意を伝授してもらうべく、トヨタグループのコンサルティング会社OJTソリューションズを訪ねた。同社では元トヨタ自動車在籍のベテラン技術者がトレーナーとなり、豊富な経験を生かした業務の改善に向けたサービスを提供している。エグゼクティブ・トレーナーの権藤次男さんに、トヨタが探し物を嫌う理由について尋ねた。

「トヨタでは仕事を大きく3つに分けて考えています。たとえば、ボールペンを探す『ムダな作業』、そしてボールペンを取る行為である『付随作業』に時間を食うと、ボールペンで字を書くという本来やるべき付加価値を生む仕事である『正味作業』に注ぐ力がそがれてしまいます。通常、探し物をはじめとするムダな動きが全体時間の30%程度を占めているといわれています。トヨタではこのムダな動きを徹底的になくし、同時に付随作業を極力少なくすることで、利益を生む正味作業の割合を最大化するように努めています」

そして、そのムダをなくすための基本は「5S(整理・整頓・清掃・清潔・躾)」であり、トヨタのモノづくりを支える基本中の基本の考え方なのだ。特に整理と整頓の2つだけでも確実に実行すれば、多くのムダがなくなり、仕事の効率がアップすると権藤さんは太鼓判を押す。

一方で「ただし、注意点があります。整理・整頓がごっちゃになっている人が大勢います。整理とは要るものと要らないものを区別し、不必要なものは即刻処分することです。しかし、要らないものまできれいに並べて整理・整頓した気になってしまう。一方、整頓とは単にきれいに並べることではなく、必要なものを使いやすいように置き場を決めて明示することです」と権藤さんは釘を刺す。