中国の肩を持つ発言を繰り返すWHO事務局長
いびつな動きは中国にもある。WHOは緊急事態の宣言を見送る一方で、テドロス事務局長がわざわざ中国を訪問して習近平(シー・チンピン)国家主席らと会見し、まるで中国の肩を持つような発言を繰り返している。
テドロス氏はアフリカで最も中国に近いといわれるエチオピアの出身だ。エチオピアで保健大臣や外務大臣を歴任し、2期10年間務めた香港出身のマーガレット・チャン氏に代わって、2017年7月からアフリカ初の事務局長となった。任期は2022年7月までの5年間だ。
前任者であるチャン氏は、鳥インフルエンザ(H5N1型)と新型インフルエンザ(H1N1型)の制圧で国際的に評価された人物である。
産経社説は「司令塔には不適格。更迭を」と事務局長を批判
WHOのテドロス事務局長に対し、産経新聞が1本の大きな社説(主張、2月1日付)で「不十分な緊急宣言 WHO事務局長の更迭を 政府は独自判断をためらうな」との見出しを掲げ、厳しく批判している。
「テドロス氏は中国から巨額インフラ投資を受けるエチオピアの元保健相・外相だ。感染当事国と向き合い『公衆衛生上の緊急事態』に対処する司令塔には不適格であり、更迭を求めたい」
見出しも本文も、「更迭」という言葉を使っている。日本の新聞社が更迭を求めてもWHOをはじめとする国際社会はなかなか動かないだろう。産経社説はそれを知りながらあえて主張している。これだけ踏み込んだ書き方をすれば、返り血を浴び、国際世論の反発を招く恐れもある。捨て身の立派な主張である。
産経社説は「封鎖された武漢から帰国した日本人や外国人からも、感染が確認されている。多くの関係国が、現地に残る自国民を至急帰国させるため、チャーター機派遣の交渉を中国政府と続けている」と書いた後、テドロス氏と中国の習近平国家主席とのやり取りをこう指摘する。
「そうした中で習近平氏は28日、北京を訪問したテドロス氏に『WHOと国際社会の客観的で公正、冷静、理性的な評価を信じる』と語った。WHOの対応に慎重な判断を求めたものだ」
「テドロス氏は『WHOは科学と事実に基づいて判断する』と応じ、『中国政府が揺るぎない政治的決意を示し、迅速で効果的な措置を取ったことに敬服する』と称賛した」