アメリカは渡航警戒レベルを最高の「禁止」に引き上げ

新型コロナウイルスに対するWHOの緊急事態宣言を受け、中国との間で出入国を制限する動きが広がっている。

アメリカは中国全土への渡航警戒レベルを最も高い「禁止」に引き上げた。さらに過去14日以内に中国に滞在した外国人の入国を2月2日から拒否している。事実上の中国人の出入国の拒否である。中国を敵視するドナルド・トランプ大統領らしいやり方である。

シンガポールやオーストラリア、ニュージーランドも同様の入国拒否を始めている。韓国も中国全土への渡航の制限をスタートした。ロシアは中国国境の検問所を閉鎖して車や列車、歩行者の通行を禁じた。フィリピンも中国武漢からの入国を禁止した。

日本は2月1日から過去2週間以内に中国湖北省に滞在歴のある外国人の入国を拒否している。特定地域を指定した入国制限は初めてで、これも中国人に対する入国拒否である。

中国との間で出入国の制限を行っている国は、すでに60以上におよんでいる。異常な事態である。

「自分たちさえ感染しなければそれでいい」が世界に蔓延

もちろん、感染症対策の基本は「移動の禁止」と「患者感染者の隔離」だ。しかし新型コロナウイルスに対し、ここまでやる必要があるのだろうか。バランス感覚を失っていないか。本来なら、医療知識のある専門家や医療器具、医薬品などの医療資源を中国に送ることが、優先されるべきだと思う。

いま世界各国は「自国第一主義」に大きく傾いている。トランプ大統領のアメリカがその象徴例だ。自分たちさえ感染しなければそれでいいという考え方が世界に蔓延まんえんしつつある。

その結果として感染症対策で自国優先に陥る国が増えている。新型コロナウイルスの感染対策の背後に横たわる自国第一主義のいびつさを意識するべきではないだろうか。