国際線増便に対し、航空会社側の動きは急だ。すでに米国大手のデルタ航空が現在、成田空港から7路線、羽田空港から2路線の運航を、20年3月からすべて羽田空港に集約させることを発表。また、日本航空も9便を成田から移すなど、新設路線を含めて羽田発着の国際線を1日22便から34便に増やすことを発表している。

桜美林大学教授 戸崎 肇氏

今後も、さらに羽田空港の国際化は進むのだろうか。「これ以上の拡大は難しいのではないかと見ています。20年の新ルートの開放も必死の交渉の末ようやく許可をもらった。しかも追加された50枠のうちほぼ半分(24枠)はアメリカの航空会社向けです。加えて、新しく航行するルートは東京上空を通るため落下物や騒音問題もはらんでいます」。

さらに発着する滑走路が足りないという問題も抱える。そこで羽田空港に第5滑走路を増設しようという動きもあるが、戸崎教授は否定的だ。

「第5滑走路をつくるということは、さらに海側にまたせり出してしまう。いま増設している第4滑走路をつくるときにも議論になりましたが、国家予算が限られるなかで数十億円という投資をしてまでつくってどうするんだという意見もあります」

世界の空港との競争激化

羽田空港の拡張に制限があるなかで、もう一方の首都圏の国際線を担う成田空港との一体運用が求められる。19年11月には、成田空港を運営する成田国際空港株式会社が28年度末をめどに第3滑走路の新設に向けて国土交通省に許可申請を出したのだ。滑走路の本数を増やし、LCC(ローコストキャリア)を中心に路線の維持拡大を狙う。

「羽田空港の国際化は、強いカンフル剤として成田空港に効いている」(戸崎教授)

しかし、羽田空港のキャパシティを拡大し、成田空港で補完させても、アジアにおける空港の国際競争という観点では、分が悪いのは確かだ。韓国の仁川国際空港や、シンガポールのチャンギ国際空港、19年9月に開港した北京大興国際空港などの国際線と国内線を集約した巨大国際ハブ空港と比べると、どうしても日本の空港は見劣りしてしまう。