羽田エリア再開発

羽田空港も通過する場所から滞在する場所にしようと新しいタイプの商業施設の導入には意欲を見せる。すでに空港施設内にはホテルやゴルフラウンジ、貸し会議室、プラネタリウムカフェなどが導入されている。20年3月末から供用開始になる第2ターミナルの国際線施設では、スペースを有効活用するためにデジタル技術を活用した新しい形の免税店もオープン予定だ。

ロボットによる清掃や案内など空港内のサービスを検討する「HanedaRobotics Lab」を開設し、2016年度より活動している。

18年7月には日本空港ビルデングの副社長に、大西洋・前三越伊勢丹ホールディングス社長が就任した。これまでの百貨店事業などでの知見を活かして空港以外での新たな事業展開および利益の創出を目指す。さらに羽田空港を情報発信の拠点として活性化を図ることが大西氏のミッションだ。

日本空港ビルデングの鷹城勲会長兼CEOは「空港というハードを、航空機の離発着だけではなく、羽田空港という立地を活かして業態・業界を超えて使われる施設にするのがテーマです。一例を挙げれば、日本発の技術として期待がかかるロボット産業の展示など、新技術や新しいビジネスのプロモーションを羽田を使って実施する。また、海外へ視点を向ける『教育』も大事だと思っている。空港を起点に、海外で学ぶグローバル人材の育成に関するプログラムなども検討中だ。例えば海外から識者を招き、羽田で講義を受けて、海外で学ぶ意欲を喚起するというイメージ。内向きになっている日本の若者への刺激にしたい」と話す。

また、羽田空港周辺では2つの再開発プロジェクトも進む。京浜急行電鉄・東京モノレールが通る天空橋周辺の第1ゾーンでは、土地を所有する大田区と連携し、鹿島建設、京急、大和ハウス工業なども加わった再開発が進められている。22年をめどに開業する施設はオフィスや商業施設だけでなく、高度医療機能やアートを取り込んだ複合施設になる予定だ。日本空港ビルデングはこちらにも参画する。

また、第2ゾーンは、多摩川を挟んだ川崎市殿町との間が、20年度内に橋梁で結ばれることになっている。第2ゾーンにもまたホテルや商業施設などが開業する見通しだが、橋を渡った殿町でも「キングスカイフロント」と称される複合施設が建設の予定だ。約40ヘクタールにも及ぶこの羽田空港周辺の再開発エリアは、世界水準の研究施設やインキュベーション施設などを取り込み、背景にある大田区の製造機能とも連携しながらオープンイノベーションの拠点となることを標榜している。

羽田空港は今、航空機の離発着だけではなく、このような異業種とも連携した、情報発信拠点として生まれ変わろうとしているのだ。