じつは、あえてそうしている。社員の仕事が複雑に絡み合うことで新たなアイデアが生まれることを期待しているのだ。
「デザインド・ケイオス(designed chaos)と呼んでいますが、それぞれのタスクを整然と効率的に区切るのではなく、あえて重なり合うようにします。当然、小さな集合知同士がぶつかることもありますが、それは付加価値を生むために必要な摩擦であり、そこから新しいものが出てくる可能性もあるのです」(吉田部長)
同社には会社組織図が存在しない。社員がお互いの垣根を越えることで生まれる“化学変化”がイノベーションを起こす契機になる。
趣味と仕事の境界のない領域からアイデアが生まれる
組織のカベを取り払い、社員の自発性を促す仕組みはそれだけではない。
「グーグルカルチャークラブ」と呼ばれる、社員同士が共有ドメインを使って集まる自主的なコミュニティは100を超える。ラーメン好きが集まる「ラーメン.JP」から「ゴルフ.JP」、なかには横浜を愛する「横浜.JP」なるものもある。また、毎週金曜日の5時から、トップを含めた全社員がビールやワインを飲みながら交流する「TGIF(Thank Goddess It's Friday)」という会もある。
有名なのが「20%ルール」だ。週1日もしくは月に4~5日、就業時間の20%を、会社と社会をよくする目的であれば個人的に好きなテーマに割いてもいいというルールだ。例えばエンジニアがこんなものがあればおもしろいのに、と思うプログラムを書いて世界中に発信する。様々な意見が寄せられ、皆がおもしろいという話になれば、最終的に製品化される場合もある。
新聞サイトの記事をカテゴライズして表示する「グーグルニュース」、コンテンツ連動型広告配信システム「アドセンス」、無料メールサービスの「Gメール」も20%ルールから生まれた。じつはほとんどの製品のアイデアはこうした趣味と仕事の境界のない世界から生まれており、同社のイノベーションの源泉になっている。