主力の広告事業に陰りが見え始めた

7月26日に、グーグルの持ち株会社である米アルファベット(以下、グーグル)が4~6月期の決算を発表した。最終利益は前年同期比14%減の160億200万ドル、2四半期連続の減益に陥った。主力の広告事業の成長鈍化が顕著だ。それは、サブスクリプション型のビジネスモデルの行き詰まりを意味する。

カリフォルニア州マウンテンビューにあるGoogleオフィスビル
写真=iStock.com/Sundry Photography
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決算説明資料において、スンダー・ピチャイ最高経営責任者(CEO)はクラウドコンピューティング(クラウド)と人工知能(AI)の分野に経営資源を再配分する方針を明確に示した。グーグルは広告分野でのサブスクリプションビジネスから、クラウドを軸としたビジネスモデルの再構築を加速させようとしている。

ピチャイCEOがその先に見据えるのは“ウェブ3.0”の世界だろう。ウェブ2.0の世界では、一部の大手IT先端企業が優先的にサービスを提供する。それと異なりウェブ3.0では個々人が常時、より能動的にネット空間に接続する。それによってわたしたちの生き方は劇的に変化する可能性が高い。より多くのビジネスチャンスを手に入れるためにグーグルは各国の企業と提携して、よりスピーディーかつ大規模にクラウドやAIを用いたビジネスモデルの確立を目指すだろう。

「サブスク」ビジネスだけではもう稼げない

4~6月期のグーグルの決算を確認すると、広告のサブスクリプションビジネスが行き詰まり始めた。グーグルにとって広告収入は成長を支えた祖業に位置付けられる。1998年に創業したグーグルは検索機能の強化によってヤフーからシェアを奪った。その上でグーグルは検索とデジタル広告を結合した。

グーグルは、個々人の検索内容を分析し、検索者の関心をピンポイントで突くアルゴリズムを開発し、デジタル広告サービスを提供した。顧客の企業は、的を絞った効率的な広告戦略を実行できるようになった。顧客はグーグルの広告サービスを一定の料金を支払い続けることによって利用する。このようにしてグーグルのサブスクリプション・ビジネスモデルが形成されたと考えられる。

4~6月期の広告事業では、観光関連の広告が増えた。米国では感染の再拡大が落ち着き、旅行に出かけようとする人が増えたことが背景にある。ただし、広告事業の収益増加率は鈍化している。2021年4~6月期の広告収入の増加率は前年同期比で68.9%だった。2022年4~6月期は同11.59%と成長の鈍化が鮮明だ。その背景には、世界経済全体で景気後退懸念が高まり、企業がコストを削減していることがある。広告市場での競争も激化している。