「10時間かかる作業を8時間で終わらせるために効率化しよう」、一見正しそうなこの考え方に「落とし穴がある」と指摘するのは、2万2000人におよぶビジネスパーソンの調査・分析を主導したクロスリバー代表の越川慎司さんだ。人事評価トップ5%社員は、成果を考えてそもそも「無駄なこと」は「しない」と決める。ところが95%社員は、作業それ自体に充足感を覚えて、いつまでも延々とやり続けてしまう傾向があると指摘する――。(第2回/全4回)

※本稿は、越川慎司『AI分析でわかった トップ5%社員の時間術』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)の一部を再編集したものです。

「時短」を目指す95%、「成果」を目指すトップ5%

「仕事の効率が高い」という言葉の捉え方は、人によって違うことがわかりました。

多くのビジネスパーソンは、説明資料や報告書の作成時間を「より短く」しようとします。定量的に見れば、10時間かかる仕事を8時間で終わらせることができれば、効率が高いといえるでしょう。

ところが5%社員は、「これは本質的な時短ではない」と捉えていました。

5%社員は、作業充実感に浸ると目的を見失う危険があると心得ているので、目的なき時短には価値を見出しません。

彼らは、「作業効率」という言葉自体の定義を明確にすることにこだわります。さもないと、成果につながらない作業をすることそれ自体に充実感を覚え、結果的に長時間労働から抜け出せなくなると考えているのです。

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5%社員は「必要のない作業をやめる」ことを最優先

5%社員は、「作業は必ず目的を明確にしてから」を鉄則にしています。その作業の必要性を確認し、必要最低限のプロセスを描いてから、作業を開始します。

5%社員にインタビューしたところ、「最も効率が高いと感じるのは、成果につながらない作業、目標達成にインパクトを与えない作業を『やめた』ときだ」と答えていました。

そもそもその業務が不要なものなら、効率を上げて仮に8の地点からスタートしたとしても、どこまで行っても「成果」はゼロにしかなりません。

5%社員はローリスク・ローリターン戦術をとるので、成果をコツコツと積み上げます。効率化の観点では、必要のない作業にかける時間をゼロにしようと注力します。そのうえで、目標達成にインパクトを与える作業にエネルギーを集中しているのです。