各企業の人事評価で高い評価を受ける「トップ5%社員」は何が違うのか。AIを駆使した調査・分析を主導したクロスリバー代表の越川慎司さんは「効率重視かと思いましたが、彼らが大切にするのは“目的”と“効果”であり、また、行動に際しては常に“仕組み化”“自動化”を考える傾向がはっきり浮かび上がりました」という──。(第1回/全4回)

※本稿は、越川慎司『AI分析でわかった トップ5%社員の時間術』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)の一部を再編集したものです。

仕事が終わらないのは「やり方」のせい

仕事が終わるのは、いつも夜遅い時間。サボっているわけでは全然なく、一生懸命に働いているのに、気がつくと時間が足りない。目先の業務に追われるばかりで、周りに評価されることもない。上司には「残業しないように」と言われているが、定時に終わることなどめったにない。

「頑張らなきゃ」とぼんやり思いはするけれど、そこでモチベーションを高める余裕はない。そもそも、バリバリのキャリアを目指しているわけでもないし、それに、家に帰ったら好きなことをしたい──。

こんな読者の方は多いのではないでしょうか。私もかつては、その一人でした。

夜遅くまで仕事が終わらない最大の理由は、能力が低いのではなく、「もっと簡単なやり方」を見つけていないからです。いつも仕事に追われるのは、やる気がないからではなく、リソース(時間・集中力・エネルギー)が限られているからです。

日本のビジネス オフィス
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目の前の仕事を「こなす」ことが目的になっていないか

「ハンマーしか持っていなければすべてが釘のように見える(If all you have is a hammer, Everything looks like a nail.)」という英語のことわざがあります。

限られた手段しか持たない、もしくは、固定概念や過去の成功体験から限られた手段に固執するあまり、問題の本質を正しく捉えられなくなることへの戒めです。

目の前の仕事をただこなすことが目的になってしまうと、本来目指すべきことが達成できなくなります。

手段が目的化され、結論ありきの行動をすることを「確証バイアス」と呼びます。あらかじめ決めつけた結果に向けて行動をすることが目的となってしまう現象です。

いつまでも仕事に追い回されることを無意識のうちに「よし」としてしまい、本来の目標から離れて仕事をこなすことが目的となり、作業充実感を持ってしまうのです。