効率優先で目的があいまいでは本末転倒…

その一方で、「効率を重視する」と答えた5%社員は21%しかいませんでした。その理由について尋ねたところ、最も多い発言が「目的」「達成」「無駄」でした。

越川慎司『AI分析でわかった トップ5%社員の時間術』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)
越川慎司『AI分析でわかった トップ5%社員の時間術』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)

AI分析(テキストマイニング)によると、「目的」と「達成」の出現度はほぼ同じで、「無駄」の前には否定の言葉がつくパターンが多くありました。

つまり、「達成すべき目標・目的が明確でなかったら、効率重視で仕事に取り組んでも無駄だ」という回答が最も多かったのです。

たとえば、早く登ることだけを考えて、頂上を見定めずに山道へ駆け出したところで、スムーズに山頂にたどり着くことはできませんよね。

5%社員は、効率ばかり重視することをリスクとして捉えているようです。

効率を高めるのはあくまで「手段」

5%社員は初動が早く、業務遂行能力も高いのですが、最初のステップである「明確な目標を持つこと」を重視すると同時に、「明確な目標がないことの危険性」についても深く理解しています。

最短距離の仕事術を実践するのは、あくまで成果を出すためであり、それ自体が目的とは考えません。

仕事効率を高めることを目的にしてしまうと、達成すべき「本来の目標」を見失い、効率が高いのにいつまでも頂上にはたどり着かないという悪循環に陥りかねません。効率を高めることは、「あくまで手段だ」と考えるのが5%社員なのです。

45%の人がハマる落とし穴「努力で何とかなる」

努力は美徳とされ、努力しないで何かを成し遂げる人はずるい、と考えるビジネスパーソンがいまだに多くいます。17万人のビジネスパーソンを対象にした別のアンケートでは、「努力が報われない」「努力をしていない人がいる」などの回答が多くありました。

頑張っているのに評価されない、という思いを抱え、自社の人事評価制度に賛同しない社員は実に4割以上

長期トレンドとして成果主義が続いており、また欧米企業が採用するジョブ型評価も徐々に浸透しつつあります。「プロセスよりも結果」「能力よりも成果」が評価される企業環境では、「努力」が過去よりも評価されにくくなっているのは事実でしょう。

また、目標に向かってひたむきに努力することは正しいことですし、目標を達成していないのに努力をしないのは言語道断です。

しかし、努力もプロセスの一部です。厳しい見方をすれば、それが「間違った努力」なのであれば、マイナス評価になってしかるべきです。